産業用ロボットが熟練技術の担い手に!?リンクウィズ 吹野氏【Tech Note MAKERS COLLECTION Vol.9】
投稿日:
- 2016年01月13日
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カテゴリ:
- インタビュー
製造業大好き女子がユニークかつ先端的な取り組みを行っているモノづくりの現場に直撃インタビューするコーナー「Tech Note MAKERS COLLECTION」。女子ならではの切り口と、笑顔、時には体当たりのパワーで、モノづくりの魅力をたっぷりご紹介します。
第9回は、産業用ロボットのシステム開発や技術コンサルティングを行うリンクウィズ株式会社代表取締役の吹野 豪氏。ソフトウェアエンジニアからキャリアをスタートし、経済産業省の「グローバル起業家等育成プログラム」で20人に選ばれてシリコンバレーに派遣されるなど、ユニークな経歴を持つ吹野氏に、これからの産業用ロボットについて伺いました。
Tech Noteレポーターの福田りえは、久々に製造現場の取材で、元製造業女子の血が騒ぎっぱなしでした!

インタビュアー 福田 りえ
静岡県出身。製造業(自動車下請け会社)に4年半勤務経験あり。 特技は走ること、おやじギャグ。過去の経験を活かしながら、製造業の皆さんのさまざまな取り組みを「実践形式」で、楽しくわかりやすくお届けします。ご覧になる皆さんの息抜きや、アイデアのヒントになるような記事にしていきたいと思ってます!
<もくじ>
1. ソフトウェアで広がる産業用ロボットの可能性
福田 りえ(以下、りえ): リンクウィズは、産業用ロボットのシステム開発を行っていると伺いました。早速見せていただけますか?
吹野 豪氏(以下、吹野):こちらが、溶接ロボットです。
りえ:速い! 想像していたより、すごく動きが速いです。そしてとても正確に動きますね。
吹野:最近のロボットは、価格の割にとても高性能になりました。当社では、ロボット自体の性能に加えて、センサーとソフトウェア技術を駆使しています。例えば従来のロボット技術であれば、溶接を開始する位置から終了するまでの位置と、その経路を手動でセッティングする必要がありました。
しかし、当社のシステムでは、アーム先端のセンサーで自動的に溶接対象の位置を把握し、その3次元計測データをもとに、ロボットがリアルタイムで溶接位置を認識し、溶接します。細かい調整を人間が行う必要がないので、溶接時間が短縮されて、熟練作業者でなくても使えます。
りえ:賢いロボットですね! そういった技術は、すでに製造業の現場に普及しているのでしょうか?
吹野:徐々に普及し始めています。最近の産業用ロボットの発展を支えているのは、ソフトウェア技術です。私のように、ソフトウェアのエンジニアだった人間にとって、モノづくりの現場は、まだまだ発展する伸び代があると考えています。
りえ:吹野さんは、もともと製造業の方ではなかったのですか?
吹野:製造業とは関係の深い3次元スキャナーやCADシステムを開発していました。ソフトウェア専門の人間にとってうれしいことに、最近ではロボットのハードが安くなり、第3者が制御しやすくなりました。これまでの産業用ロボットは、ロボットメーカーとクライアントだけで工場のラインを作っていました。これからは、われわれのようにソフトウェアの知見を駆使した産業ロボットの「システム」を提供する企業が必要とされています。
2. 産業用ロボットの用途は「単純作業」から「頭を使う作業」へ?
りえ:産業用ロボットを導入する企業は、具体的にどのような効果を望んでいるのでしょうか?
吹野:これまでの「産業用ロボット」には、とにかく単純作業を早く安くやらせるイメージがありました。ロボットは、全く同じ動きを繰り返していました。一方、最近活躍しているロボットは、先ほどお見せしたように、溶接する位置を自分で毎回考えて少しずつ異なる動きをします。
そうやって、単純な反復作業ではなく、これまで人間が行っていた頭を使う作業もロボットが行えるようになりました。つまり、従来よりも、熟練度が必要とされる作業や、製造の工程を抜本的に変えるような作業が、ロボットに求められています。
りえ:ロボットが製造の工程を変えるとは、どのような意味ですか?
吹野:例えば、板金のプレス加工では、どうしても反りが発生してしまいます。上下どちらに反りが発生するかは毎回異なります。次の工程が非熟練者や単純作業のロボットによる作業の場合、反っている板金を扱うのは非常に難しいです。そのため、高額な治具を使って、そもそも反りが発生しないようにしていました。
ところが、ロボットが毎回異なる反りの方向を見極め、その誤差を補正するような作業を行えば、問題は解決します。高級な治具も熟練者の技術も、どちらも必要無い工程を作ることができるのです。
りえ:なるほど! 吹野さんのロボットは、人間であれば頭を使う作業もできるのですね。ロボットに任せることができる作業の範囲が、広くなってきたといえるのでしょうか。
吹野:そうですね。ここ数年の製造業の課題は、団塊の世代がリタイアすることに伴う技術の喪失と、その技術を継承する若者が不足していることです。今後の産業用ロボットの意義としては、単純労働の担い手ではなく、技術継承の担い手になってくるのではと思っています。