波乱万丈?EV設計スキルを武器に世界を渡り歩く!ミニモ 江本氏【Tech Note MAKERS COLLECTION Vol.10】
投稿日:
- 2016年01月27日
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3. EVだからできること
あずさ:なるほど。EVって、環境にやさしかったり、音が静かだったりします。それをアピールすると、バイクメーカーにとっては、既存の製品を否定することになってしまうのですね。では、ミニモのような会社が増えると、今までに見たこともないようなEVも増えていくのでしょうか?
江本:長年EVのデザインをやっていて感じるのは、デザインの自由度の高さです。基本的には車輪の中に入るモーターとバッテリーで構成されるので、今までのガソリン車と全く違うデザインが可能です。目的に応じて、さまざまなデザインを実現できます。この多様性こそが最大のメリットです。
あずさ:新しい分野が開けているようで、楽しみですね。
江本:実は、同じようなパラダイムシフトが、カメラでも起こりました。アナログのカメラは、フィルムを収納するスペースやフィルムを感光させるための機構が必要でした。デジタルカメラに変わったとき、一気にデザインの自由度が高まりました。今では、コンパクトデジカメ、スマートフォンに搭載されたカメラ、ウェアラブルカメラなど、さまざまな形態が存在します。同じように、さまざまなかたちのEVが生まれてくるでしょう。
あずさ:確かに、デジカメっていろんな形がありますよね。昔は制約があって、自由なデザインができなかったのですね。
江本:EVのデザインを研究する過程で、デジカメの事例はよく調査しました。もちろん、カメラと違って、EVは法律の制約が多く、完全に自由というわけにはいきません。それでも多くのEVが生まれています。例えば、私がデザインに携わったFOMMの電気自動車もその一つです。

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あずさ:こちらもカワイイデザインですね。しかも水陸両用!
江本:津波などの水害のときには水面に浮き、車輪を回転させると前に進むことができるのです。ガソリン車のように燃料を燃やす必要がないので、実現できたEVです。
4. エンジニアに必要なのは、技術力か、メンタルか
あずさ:江本さんは、いろんな国や企業を転々とされている上に、独立後も他社のEVデザインを手掛けるなど、とても幅広く活躍しています。EVのデザインという技術力を武器に道を切り開いてこられたのでしょうか?
江本:そうですね。「EVのデザイナーです」と言うと、絵を描いているだけと思われることもあります。しかし、きちんと動くことはもちろん、ユーザビリティやコストも考慮する必要があります。まだEVの専門家が少ないので、起業した今でも他社からお誘いがあります。最近では、あるテーマパークが、子供向けに自動車の製造工場を体験できるアトラクションを企画しており、その車両のデザイン開発を頼まれています。
あずさ:私もモデルの仕事をしながら、個人的なつながりから仕事をいただくこともあります。何らかの専門性があると、お仕事が向こうからやってくる。エンジニアにとっては、専門的な技術力を磨くことが必要だといえますね。起業をする上で、大事なことは何でしょうか?
江本:専門的な技術は、仕事を得るのに役立ちます。ただ、私が起業で大事だと思うのは、専門性よりも、精神的独立心、個として立つ姿勢です。いくら技術力があっても、大企業の一社員と違って、収入には浮き沈みがあります。それにうろたえずに、自分の力でやっていくんだという強い気持ちの方が、起業の成功には重要です。
あずさ:なるほど! 私も気持ちを強く持って、がんばります。ありがとうございました!
会社プロフィール
株式会社ミニモ(神奈川県横浜市)

株式会社ミニモは、2008年の設立以来、自動車デザインや電動ビークルの開発を得意とする「デザイン開発会社」として、さまざまな企業からの開発、試作品製作業務を受託しています。零細規模でありながら、ワールドクラスのデザインクォリティと大手メーカーレベルの開発スキルを備えたユニークな会社として、お客様と社会に貢献しています。
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あずさ‘sコメント
江本さんは、いろんな職場を経験して、各地でいろんなものを吸収された方だと思いました。技術力やメンタルなど、土台がしっかりしていると、大きな会社に所属していなくても、いろんなお仕事に巡り合うチャンスがあるのでしょうね。私自身の仕事に生かせそうな気付きも多くて、有意義な取材でした!