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医療用医薬品の将来予測:市場レポート

ポイント

  • 2023年の医療用医薬品生産高は、制度改革の影響で9兆7,587 億円と予測
  • 制度改革を上回る需要拡大の場合、12兆1234億円と予測

調査会社の矢野経済研究所は、2016年5月10日に医療用医薬品の調査結果を発表しました。

市場概況

2016年度の診療報酬の改定率は、医科は0.56%、 歯科が0.61%、調剤が0.17%となり、診療報酬本体で0.49%のプラス改定となりました。また薬価はマイナス1.22%、医療材料価格はマイナス0.11%となり、合計でマイナス1.33%となりました。なお2015年12月に公表された薬価調査の結果では、薬価と実勢価格との平均乖離率は約8.8%、医療材料は同7.9%となっています。また今回薬価部分の見直しについては、市場拡大再算定による薬価の見直しやその特例の実施、新規収載された後発医薬品(ジェネリック医薬品)の価格の引下げ、長期収載品(ジェネリック医薬品のある先発品)の特例的引下げの置き換え率の基準の見直しなどが行われました。

従来の医療提供体制では、超高齢化社会に大きく変化したわが国で適正な医療提供体制を維持することが困難になっています。在宅患者への対応を救急医療体制に依存すれば救急患者を受け入れる医療機関に大きな負荷がかかり、医療サービスの改善が見込めません。また地域によって医療提供体制に大きな差が生じることも問題です。そのため政府は地域包括ケアシステムを早期に確立することで、超高齢化社会に対応した医療提供体制に変更する動きを強めることになりました。

注目すべき動向

C型肝炎治療薬市場:特例拡大再算定制度による薬価引き下げ対象へ

2016年度の薬価制度改革において、これまでの市場拡大再算定制度を拡大させた特例再算定制度が盛り込まれました。要因としては、高額な C型肝炎治療薬が一気に売上規模を拡大したこと、医療費助成が行われたことが挙げられます。

2015年5月に薬価収載されたギリアド・サイエンシズ株式会社のソバルディ(一般名:ソホスブビル)とリバビリンによる併用治療では、健康保険適用で3割の自己負担額としても、治療期間である12週間の薬剤費だけで約180万円程度となります。しかし我が国においては医療費助成により所得の高い患者でも最大で8万円程度、所得の低い患者では3万円程度の自己負担で済むことになりました。両剤は2016 年3月時点でも好調な売上を維持しています。 しかし、2016年4月から実施されることになった薬価改定では、特例拡大再算定制度の対象品目となったことから、「ソバルディ」と「ハーボニー配合錠」は31.7%もの大幅な薬価の引き下げを受けました。両剤ともC型肝炎が高い確率で完治するとされており、早晩、売上高のピークを迎えることになると考えられ、売上高にブレーキが掛かることは避けられません。

抗がん剤市場:がん免疫療法剤の登場

2014年9月に小野薬品工業株式会社が、がん免疫療法剤「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)を悪性黒色腫治療薬として発売しました。「オプジーボ」は、これまでの免疫療法剤とは異なる作用機序となっており、肺がん、胃がん、食道がん、大腸がん、 肝臓がん、乳がんなどの主要な部位に保険適用を広げることが可能とされています。しかし、「オプジーボ」 は 2014年に取得した薬価が原価計算方式による算定となり、高額な医薬品となっています。今後、小野薬品とブリストル・マイヤーズ スクイブ社では他の部位の適用も取得するとしていることから、現在よりも薬価が引き下げられたとしてもブロックバスター(莫大な売上や利益をあげる新薬)になる可能性が大きいと予想されます。

これ以外にも海外のメガファーマは、がん免疫療法剤の開発を進めています。その代表が米国メルク・ア ンド・カンパニーの「キートルーダ」(一般名:ペンブロリズマブ)で、2014 年 9 月に米国市場で悪性黒色腫 の治療薬として発売されました。現在、「オプジーボ」と「キートルーダ」は、世界の市場においてシェア争いを繰り広げ始めています。先行する2社の後を追うようにして、アストラゼネカやロシュグループ、ファイザーが続いており、がん免疫療法剤においては、この5社でし烈な戦いが繰り広げられることになると考えられます。国内の製薬企業の多くも、中期経営計画などで注力する開発分野に「がん」を挙げていることから、エーザイ株式会社や協和発酵キリン株式会社のように海外のメガファーマと提携し、名乗りを挙げることもありえます。他にも国内の大手製薬企業である武田薬品工業株式会社、アステラス製薬株式会社、第一三共株式会社、大塚製薬株式会社の今後の動きが注目されます。

将来予測

矢野経済研究所は、医療制度改革や薬価制度の見直しが医療用医薬品需要に及ぼす影響度合いにより、ケース1とケース2の 2種類の予測値を算出しています。

ケース1は、ジェネリック医薬品の数量ベースシェアが2020年頃までに80%に達し、市場は新薬かジェネリック医薬品かという構造を持つことを想定して算出し、2015年には9兆3,968億円、2019年には9兆9,651億円、2023年には 9 兆7,587 億円と予測しています。

ケース2は、製薬企業の努力によって、医療制度改革や薬価制度を上回る医薬品の需要拡大が見込まれることを想定し、2015年では9兆5758億円、2019年には10兆9858億円、2023年には12兆1234億円を予測しています。

このように、ケース1ではわが国の2023年医療用医薬品生産高も9兆円台に留まり、ケース2では10兆円を突破する市場になると予想されます。
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注1:厚生労働省「平成26年度薬事工業生産動態統計年報」の医療用医薬品の生産高に生産高を加えた2014年確定値を元に算出、なお2014年の確定値は当該統計データより引用
注2:2015年以降は矢野経済研究所予測値
注3:輸入品を含む

出典:矢野経済研究所 ニュースリリース

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