バイオディーゼル燃料:バイオマスの基礎知識5
投稿日:
- 2020年02月27日
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カテゴリ:
- 基礎知識
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前回は、バイオエタノールを解説しました。今回は、バイオディーゼル燃料について説明します。車両燃料として、ガソリンと並んでディーゼル燃料が使われています。石油系燃料の代替として、バイオマス由来のバイオディーゼル燃料が、多くの国で導入されています。日本では、廃食品油を主な原料としてバイオディーゼル燃料が生産されています。廃食品油をアルカリ法という方法で処理して、脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Ester 以下バイオディーゼル燃料と略)に変換して最終製品としています。バイオディーゼル燃料導入の経緯、製造法、これからの課題などについて紹介します。
1. バイオディーゼル燃料導入の経緯と実態
植物油や廃食品油などを原料として生産される、軽油の代替となる燃料をバイオディーゼル燃料と称しています。植物油には菜種油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、パーム油などがあります。
ディーゼルエンジンは、約100年前にパリで開催された万国博覧会で、ドイツの技術者であるルドルフ・ディーゼルによって紹介されました。この時は燃料としてピーナツ油が使われました。植物油を直接ディーゼルエンジンで使用すると、燃焼室内に未燃カーボンが蓄積してエンジンに不具合が生じます。このため、温度を上げたり、石油系のディーゼルオイルに混合するなどして使用します。現在は、メタノールとエステル交換反応を行って、ディーゼル油程度に粘度を低下して使うことがほとんどです。
世界全体では2016年で約3000万klが生産されています。原料には地域性があり、欧州では菜種油とヒマワリ油、アメリカでは大豆油、東南アジアではヤシ油が使われています。全国バイオディーゼル燃料利用推進協議会によれば、日本の2017年度のバイオディーゼル燃料の生産量は約1.4万klとなります。国内最大規模のプラントは京都市のプラントです。京都市では、京都市南部クリーンセンター構内に設立された京都市廃食用油燃料化施設において、2004年6月よりバイオディーゼル燃料を生産しています。2018年は日量で約5kl、年間で約1000klが生産されています。
京都市では、2018年4月現在、バイオディーゼル燃料が100%(B100)の燃料は、101台のゴミ収集車に使用されています。また、バイオディーゼル燃料を5%含むB5はゴミ収集車47台とバス108台の燃料として使われています。二酸化炭素の削減量は年間で2100トンに相当します。
一般公道を走行する車両にバイオディーゼル燃料を使用すれば、軽油引取税が課税されることになります。バイオディーゼル燃料を軽油と混合して販売したり、自動車の使用者が自らバイオディーゼル燃料を購入したり、製造して軽油と混合して使用する場合は、軽油引取税の課税対象となります。軽油引取税は地方税であり、各都道府県の税事務所での判断によって課税基準が決められます。
日本ではこれまで、バイオディーゼル燃料についての規格が存在していませんでしたが、総合資源エネルギー調査会により、欧州規格を参考にして規格化が検討されました。この検討を受けて2007年に省令が公布され、バイオディーゼル混合燃料油の一般のディーゼル車への流通を念頭に、2007年3月に「揮発油等の品質の確保等に関する法律」の軽油の強制規格が改正されました。
この改正内容は、軽油へのバイオディーゼル燃料の混合率が5%以下とされ、3価の脂肪酸にグリセリンが結合したトリグリセリドの含有率、メタノール含有量などが追加されたものです。なお、この法律ではあくまで炭化水素油を対象とした規制であるため、混合率が5%を超えるバイオ混合軽油や炭化水素成分を含まないB100は、この法律の規制の対象とはなりません。これらを自動車用燃料として使用する場合には、不具合を避けるために、燃料品質、車両構造、点検整備などに留意が必要になります。
2. バイオディーゼル燃料の製造法
現在使用されているバイオディーゼル燃料のほとんどは、図1に示すようにアルカリ法といわれる方式で製造されています。すなわち、植物油を水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを触媒としてメタノールと反応させます。反応終了後は、層分離が生じ、上層にエステルが浮上するとともに、下層にはグリセリンが沈降します。エステル層にはアルカリ触媒やグリセリンが残存しているので、これを除去するために温水で数回洗浄します。その後、加熱して水分を蒸発させることで、精製されたバイオディーゼル燃料を得ることができます。この反応はトランスエステル化反応であり、グリセリンが副生します。反応は大気圧下温度約60℃で進行し、反応時間は1時間程度です。
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3. 今後の課題
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