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ろう付けとは:ろう付けの基礎知識1

ろう付けの基礎知識

更新日:2018年9月4日(初回投稿)
著者:東海大学 工学部 材料科学科 教授 宮沢 靖幸

ろう付けとは、母材を傷つけることなく接合できる冶金技術です。その一方で、精度の高い接合を行うためには、ろう材、フラックス、加熱源の選択など、専門的な知識を要します。本連載では7回にわたり、ろう付けの基礎知識を解説します。初回となる今回は、ろう付けの定義と特徴、他の溶接技術との比較を行います。

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1. ろう付けの定義

ろう付けとは、冶金(やきん)接合技術であり、高性能な接合部が得られます。冶金とは、原子間引力を利用して、金属を接合する技術です。ろう付けでは、ろう材と呼ばれるのり・接着剤の役割を担う合金を、接合部の隙間に挟み込むことによって、接合部を作ります(図1)。なお、ろう付けはろう付と表記される場合もあります。

図1:ろう付け技術の概念図

図1:ろう付け技術の概念図

ろう付け前、一定の隙間を持つ母材接合部の外周部へ、ろう材を配置します。その後、全体を加熱します。液相線温度を超えると、ろう材は溶け出し、母材に対して良好なぬれを示す溶融ろう材(のりの役割を担う合金)となります。ぬれとは、溶融したろう材が母材に接触した際に、表面上に広がる現象のことです。

ろう付け中、溶融ろう材が、母材の隙間へ毛細管現象により浸透します。母材の隙間は、50~200µm程度が標準で、肉眼での確認は困難なサイズです。毛細管現象とは、乾いたタオルが水を吸い込む時の物理現象と同じです。その後、溶融ろう材と母材間で生ずる界面反応により、十分な冶金的接合を達成します。最後に凝固し、継手が完成します。

以上をまとめると、ろう付けは、被接合材(母材)を母材とは異なる金属(主に合金、ろう材)で接合する技術です。具体的には、母材とろう材を、ろう材のみが溶融する温度まで加熱し、溶融ろう材を接合部へ毛細管現象により浸透させます。さらに、溶融ろう材と固体母材間で生ずる界面反応現象と、それに続く凝固過程で、界面に強固な冶金的な接合を生じさせるものです。

モノとモノを接合する方法は、多様に存在します。機械的にボルトとナットで固定する方法、接着剤で接合する方法、金属を溶かして接合する溶接などがあり、それぞれに一長一短があります。その中でも、ろう付けは、最も古い冶金接合技術であるといわれており、エジプト期の文化遺産の製造にも用いられていました。長い歴史の中で、さまざまな進歩を遂げ、現在も多くの工業製品で、部品同士の高品質な接合を得るために活用されています。

2. ろう付け、溶接、はんだ付けの違い

溶接は、ろう付けと並び、同じ工業製品の接合でよく使われる技術です(参考:溶接の基礎知識 第1回)。また、はんだ付けという接合技術も、広く知られています。では、ろう付けと溶接、はんだ付けとは何が違うのか、具体的に見ていきましょう。

溶接では、溶接金属でつなぐと同時に、エネルギー密度が高い熱源により、母材そのものを局所的に溶かして接合します。図2は、溶接前後の溶接部の断面図を示したものです。溶接後には、母材が溶接金属の熱により溶け、接合面が変形しているのが分かります。対照的にろう付けは、母材をほとんど溶かさない接合法です。従って、微細精密部品や、薄板の精密接合に適しています。

図2:溶接前後の溶接部断面図

図2:溶接前後の溶接部断面図
微細精密部品接合の代表例が、電子基板へのはんだ付けです。はんだ付けの原理は、実はろう付けと同じです。継手の用途や要求性能が異なり、のりの役割を担う合金をはんだと呼ぶため、ろう付けと異なる技術とよく勘違いされています。異なる点は、ろう材とはんだの液相線温度です。450℃より高い液相線温度を持つ合金をろう材、450℃より低い温度を持つ合金をはんだと称しています。450℃に物理的な意味はなく、450℃近くを液相線温度とするろう材やはんだが少なかったためといわれています。英語ではろう付けをBrazing、はんだ付けをSolderingと区別していますが、ドイツ語では両者をLötenと称し、区別していません。

3. ろう付けの特徴

ろう付けの長所と短所を確認しましょう。

<長所>

  • 母材をほとんど溶融することなく、薄板や精密部品の接合が可能。
  • ろう材の浸透により、複雑な形状の部品や、多数箇所を接合する部品の同時接合が可能。
  • ろうおよびろう付け法の選択により、異種金属同士や金属と非金属の接合が可能。
  • ろうと母材の融点が異なるので、再ろう付けや取り外しが可能。
  • 最適接合条件下であれば、母材同等かそれ以上の接合強度を得ることが可能。
  • 比較的作業が簡単で仕上がりが美しく、自動化や大量生産化にも向く。

<短所>

  • 加熱を伴う作業のため、熱影響は避けられない。
  • 接合部にはろう材、母材という異種材料界面が存在する。これは、継手の性質に若干影響を及ぼす。
  • 継手精度の管理が難しい。

このように、ろう付けは数多くの特徴を有しています。続いて、溶接との対比において、ろう付けの最大の特徴となる利点を解説します。

日常生活でモノとモノを接合させる時、簡易的な部分接合を行うホチキスや粘着テープ類の他に、接着剤やのりを用いることが多いでしょう。この場合、のりなどを接合全面に塗布し、面と面を十分に密着させ、乾燥させることによって接合させます。

一方、ろう付けは、接合面を完全に接合する技術でありながら、ろう材(のりの役割を担う合金)を接合面全面に塗布する必要がありません。図1のとおり、接合部の外周部に設置したろう材は、溶融後に隙間に毛細管現象で浸透し、接合部を形成します。従って、ろう付けは高い気密性や水密性などが求められる接合部に向いています。

代表的な事例が、自動車エンジンやエアコンなどの家電品に利用されている、熱交換器です。熱交換器とは、2種類の物質間で熱のみを交換するシステムであり、高信頼と高機能が要求される部品です。熱交換器内の両物質は、完全に分離されている必要がある一方、両物質間を隔てる壁には、熱交換のために、薄さと高い熱伝導率が要求されます。金属薄板は、両者を兼ね備えた唯一の材料であり、この接合に適した技術が、ろう付けです。

これが溶接の場合、接合部に沿って局所的なエネルギーを投入し続ける必要があります。従って、溶接部はエネルギーを投入できる形状としなければならず、一般的には線状または点状の接合部となります(表1)。

表1:ろう付けをはじめとする接合技術の特徴比較
 接合技術  接合形態 加熱/加圧
する範囲 
点接合線接合面接合
ろう付け 全体
溶接アーク溶接  局所
スポット溶接  局所
レーザ溶接 局所
固相接合拡散接合  全体
FSW
(摩擦撹拌接合)
 局所
接着全体
機械的締結  局所

いかがでしたか? 今回は、ろう付けの定義や特徴、他の接合技術との比較を行いました。次回は、ろう材の種類とぬれついて解説します。お楽しみに!

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