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セラミックスの物理的特性評価と化学的特性評価:セラミックスの基礎知識10

セラミックスの基礎知識

更新日:2021年4月13日(初回投稿)
著者:東海大学 工学部 材料科学科 教授 松下 純一

前回は、セラミックスの物理的特性評価のうち、機械的特性評価として、密度、強度、および硬度の評価を紹介しました。今回は、最終回です。未解説の物理的特性評価と、化学的特性評価について解説します。

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1. セラミックスの破壊じん性・弾性率評価

セラミックスの破壊じん性(Fracture Toughness)とは、亀(き)裂などの欠陥を有する材料に負荷が加わった際に、破壊に対して働く抵抗をいいます。セラミックスの破壊じん性の測定方法としては、ノッチド・ビーム法(Notched Beam Method、NB法)、シェブロンノッチ法(Chevron Notch Method、CN法)、コントロールド・サーフェイス・フロー法(Controlled Surface Flow Method、CSF法)、予亀裂(よきれつ)導入破壊試験法(Single-edge Precracked Beam Method、SEPB法)、圧子圧入法(インデンテーション法、Indentation Fracture Method、IF法)などが提唱されています(図1)。

図1:セラミックスの破壊じん性の測定方法

図1:セラミックスの破壊じん性の測定方法

日本産業規格JISでは、ファインセラミックスの破壊じん性試験方法として、室温における予亀裂導入破壊試験法、および圧子圧入法の2つが規定されています(JIS R 1607)。高温における破壊じん性の測定は、ファインセラミックスの高温破壊じん性試験法として、予亀裂導入破壊試験法が規定されています(JIS R 1617)。なお、国際標準化機構ISOでは、Single-edge V-notch Beam Method (SEVNB法)が規定されています(ISO 23146、ISO 6872)。

・予亀裂導入破壊試験法
予亀裂導入破壊試験法による破壊じん性の評価は、あらかじめ、曲げ試験片に亀裂を導入し、試験片の予亀裂の入った面を引張面側(下部スパン側)にセットします。次に、室温から高温下で、JISの曲げ強さ試験に準拠して、3点曲げ試験を行い、破壊荷重を測定することにより、破壊じん性値(KIC)を算出します。図2に、破壊じん性を評価するIモード(開口(引張)モード)の他、IIモード(面内せん断モード)、およびIIIモード(面外せん断モード)を示します。I~IIIの破壊モードは、独立モードです。一方、混合モードによる破壊もあります。

図2:破壊モード(IからIII)の模式図

図2:破壊モード(IからIII)の模式図

セラミックスの破壊じん性の評価は、アメリカのアーウィン(George Rankin Irwin)によって提唱された応力拡大係数Kの臨界値(Critical Value)を用い、亀裂伝播抵抗が亀裂面に引張応力の働くモードIで行います。すなわち、破壊じん性値KICとは、破壊モードIの応力拡大係数の臨界値の意です。

・圧子圧入法
ファインセラミックスの室温での破壊じん性の評価方法としては、一般的に、圧子圧入法が用いられています。この方法は、緻密な焼結体で、鏡面研磨されている試料であれば、比較的容易に破壊じん性を評価することが可能です。試験方法は、ビッカース硬度計などを用いて、ビッカース硬さを求めるのと同時に、圧痕から発生している亀裂長さを計測して、値を算出します。ただし、この評価が適用できるのは、亀裂の先端(終点)がどこであるかを識別できる鏡面仕上げで、かつ存在する気孔で亀裂が止まってしまわない(ピンニング効果の一種)試料に限定されます。なお、評価の際の圧痕荷重は、四方の圧痕エッジ付近が貝殻状の破壊(Conchoidal Fracture)を起こさない程度に設定する必要があります。ただし、あまりに低荷重の条件では、導入される圧痕が小さく、進展した亀裂長さも短いため、計測誤差が大きくなり、注意が必要です。

破壊じん性評価の他、弾性率評価により測定する方法もあります。弾性率(Elastic Modulus)とは、変形のしにくさを表す物性値であり、弾性限度内にある物質の応力とひずみの比を表します。類似したものに、ヤング率(Young’s Modulus)や剛性率(Shear Modulus)があります。ヤング率は、物質を引っ張ったときに、単位長さ当たりの伸びと、単位断面積当たりの引っ張る力の関係における比例定数の逆数です。剛性率は、せん断(Shear)応力と、せん断ひずみの関係における比例定数です。弾性率評価には、静的弾性率によるものと動的弾性率によるものがあります。

室温における静的弾性率、および静的弾性率の測定方法は、ファインセラミックスの弾性率試験方法としてJISで規定されています(JIS R 1602)。また、高温における動的弾性率の測定法も、ファインセラミックスの高温弾性率試験法として規定されています(JIS R 1605)。

・静的弾性率と動的弾性率による測定
静的弾性率(等温弾性係数)の試験は、試験片に静的な荷重を加え、それによって生じる弾性変形を測定し、得られた応力とひずみの関係から弾性率を求める方法です。JISでは、3点曲げ、および4点曲げ試験法により求める方法が規定されています。一方、動的弾性率(断熱弾性係数)の試験は、板状などの試験片に強制的に振動を与え、それによって生じる共振周波数を測定する方法と、高い周波数の超音波パルスを励起させ、その超音波パルスが試験片内部を伝播する速度を測定する方法があります。前者は、共振法(曲げ共振法)、後者は、超音波パルス法と呼ばれ、どちらの試験方法もJISで詳細に規定されています。

2. セラミックスのクリープ・摩擦摩耗性評価

クリープ(時間依存性変形、Creep)とは、ある一定の環境下で、長時間、一定の応力が加わったときに、材料に生じる変形過程挙動のことをいいます。クリープ試験方法には、曲げクリープ、引張クリープ、および圧縮クリープがあります。なお、ファインセラミックスのクリープ試験方法としては、ファインセラミックスの曲げクリープ試験方法、およびファインセラミックスの引張クリープ試験方法が、それぞれJIS R 1612、およびJIS R 1631として規定されています。

疲労(Fatigue)は、機械的疲労と熱的疲労に大別できます。また、機械的な繰り返しの応力と、熱的な応力が複合した熱機械疲労もあります。JISでは、ファインセラミックスの室温曲げ疲労試験方法が規定されています(JIS R 1621)。

セラミックスの摩擦(Friction)と摩耗(Wear)による摩擦摩耗性の評価には、評価対象となる材料同士で行う場合と、異なる材料を組み合わせて行う場合があります。評価結果は、温度や雰囲気、水分などの外的因子にも大きく左右されます。摩擦摩耗性の評価は、通常、ピンオンディスク法、ボールオンディスク法、大越式、津谷式、アムスラ式などの方法により試験されます。JISでは、ファインセラミックスのボールオンディスク法による摩耗試験方法が規定されています(JIS R 1613)。

3. セラミックスの熱衝撃性・熱的・光学的評価

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4. セラミックスの寿命予測

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5. セラミックスの電磁気的評価

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6. セラミックスの化学的特性評価

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