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擦り合わせ型開発と組み立て型開発:構想設計の基礎知識1

構想設計の基礎知識

更新日:2017年1月12日(初回投稿)
著者:庄司技術士事務所 庄司 尚史

皆さんの職場に、プリンタや複合機はありますか? ほとんどの人が「はい」と答えるでしょう。なくてはならないオフィス機器の一つといえます。実は複写機・複合機は、日本のメーカーが大きなシェアを持つ分野。今回から5回にわたり、レーザープリンタの製品開発に学ぶ、構想設計の基礎知識をお届けします。

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1. なぜ、日本メーカーが強いのか?

プリンタや複写機は、仕事の現場で最もなじみのある装置の一つです。現在は、スキャナやFAXの機能を盛り込んだ複合機の人気が高くなっています。複合機の画像形成部分は、レーザープリンタそのものです。総務省の平成26年版情報通信白書によると、業務用複写機・複合機の日本企業の世界シェアは100%近くあり、欧米やアジア各国に輸出されています。日本メーカーが強い分野といえます。

製品開発の視点から、その理由を探ってみます。レーザープリンタの画像形成は、電子写真(ゼログラフィ)という方法を用いています。その原理を図1に示します。この精密機械のプロセスを製品化するために、機能材料開発、レーザー光学系、粉体工学、静電気、精密駆動、紙搬送、熱工学、画像処理、フィードバック制御、電子回路設計など、さまざまな専門分野が関わり、システムは多くの部品やモジュールで構成されています。これらを統合する技術も必要となります。

図1:レーザープリンタの原理

図1:レーザープリンタの原理

この製品開発の特徴は、擦り合わせが多いことです。ここでの「擦り合わせ」とは、製品開発の各プロセスの担当者が相談し、最適解を見いだしていくスタイルを指します。次の章で詳しく説明します。

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2. 擦り合わせ型開発と組み合わせ型開発

一般に製品開発の方法には、組み合わせ型開発と擦り合わせ型(または統合型)開発があるといわれています。両者の特徴を表1にまとめました。

表1:擦り合わせ型開発と組み合わせ型開発の比較
項目組合せ型開発
(モジュラー開発)
擦り合わせ型開発
(インテグラル開発)
製品の構成全体システムを構成するモジュールが標準化されたインターフェースにより組み合わされる各モジュール・部品を単独ではなく、他の部分と関連させながら作り込む
製品例パソコン、携帯電話、液晶ディスプレイなど自動車、複写機など
システム設計トップダウン的モジュールとの相互通行的
モジュール(部品)分割された機能と対応し、他の部分と独立している機能と対応しておらず、他の部分との関係が強い
インターフェース標準化されている製品ごとに決められる
開発の進め方トップダウン的に設計が行われ、各モジュール・部品は決められた仕様を満足するように製作されるモジュールの開発担当者は他のパートの担当者と打合せをしながら開発を進め、全体システムの設計者は状況に応じて設計方針を修正していく

組み合わせ型の代表的な製品は、パソコンです。CPU、メモリ、補助記憶装置、キーボード、ディスプレイ、プリンタなどは、それぞれインターフェースの規格が決められており、原則的にどのメーカー同士の部品でも組み合わせることができます。液晶ディスプレイや携帯電話も、部品や規格を満足したモジュールを、組み立てメーカーが最終製品にします。

一方、擦り合わせ型は、部品の交換性や汎用性よりも、全体最適を優先させて部品・モジュールを作り込んでいきます。そのため、ムダを省きながら製品の特徴を最大限に引き出すことができます。代表的な量産製品は、自動車や複写機などです。今は組み合わせ型の製品も、かつては擦り合わせ型だったものが多くあります。

開発プロセスの観点では、組み合わせ型はシステム設計者からのトップダウンで開発を進めます。それに対し、擦り合わせ型は、相互通行的に各プロセスの担当者がコミュニケーションを取りながら進めます。各モジュールは機能が完全に独立しておらず、相互の関連性が強いためです。システム設計者が強い権限を持っているわけではありません。

組み立て型と擦り合わせ型は、どちらが優れているかは一概に言えません。組み立て型は製品の個性や特徴をアピールしにくく、最終的にはコスト競争になってしまう傾向があります。擦り合わせ型は全体方針が不明確になり、成り行きで開発が進む恐れがあります。本来は、製品の特徴にふさわしいタイプで開発を進めるべきですが、企業の組織形態と取るべき開発スタイルが合っていないという指摘(ブログ:仕組み改革と意識改革で開発を変える)もあります。

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3. 擦り合わせ型開発と構想設計

設計のプロセスは、大きく企画、構想設計、基本設計、詳細設計の段階があります(表2)。このうち構想設計は、製品のコンセプトに基づき技術方式や全体構成を決め、製品開発全体に大きな影響を与えます。

表2:一般的な開発ステージ
段階内容
企画・市場のニーズの把握、競合他社の状況や特許の調査・分析などを行い、商品コンセプトを決める
・具体的なデザインや目標性能、販売価格、利益目標、投資額などを明確にする
構想設計・製品のコンセプトに基づき、技術方式や全体構成を決める
・必要に応じてサブシステム(モジュール)に分解し、それぞれの技術仕様を設定する
基本設計・全体システムまたはモジュールの基本構成や寸法などを決める
詳細設計・基本設計までで決められた構想に基づき、公差を含む詳細部分の寸法などを決める

近年、組み立て型開発のパソコン、半導体、液晶TVなどは人件費の安い新興国での生産が主流になり、日本メーカーは相次いで撤退しています。日本のモノづくりの強みを生かすために、改めて擦り合わせ型開発に着目してみては、いかがでしょうか。もちろん擦り合わせ型開発も、従来のままというわけではなく、合理化が不可欠です。また、擦り合わせ型開発には全体を調和させる技術が重要で、ともすれば担当者間の部分最適化に陥りやすくなります。その結果、重要な問題が発生しその対策のために開発期間が長引いたり、製品本来の目的が見失われたりする恐れがあります。

擦り合わせ型開発でも、構想設計が重要です。構想設計では、設計思想とその実現手段を打ち出します。組み合わせ型開発ではトップダウン的なシステム設計になるのに対し、擦り合わせ型開発では、柔軟性を持たせることが必要になります。実際の運用面を含めて、具体的な進め方を明らかにしておくことがポイントです。

構想設計の基礎知識では、日本メーカーの強さに注目し、擦り合わせ型の製品開発における構想設計を解説していきます。構想設計の重要性、基本原則を述べるとともに、実際の進め方について説明します。次回は、擦り合わせ型開発の成功のための考え方を紹介します。それでは今回はこの辺で。

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