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優良顧客の囲い込み:顧客管理(CRM)の基礎知識2

顧客管理(CRM)の基礎知識

更新日:2021年5月28日(初回投稿)
著者:東京大学 大学院 経済学研究科 マネジメント専攻 経営講座 教授 阿部 誠

前回は、顧客ニーズをマスから個々人のものとして認識・展開する新たなマーケティングを紹介しました。今回は、潜在的な優良顧客の囲い込みに焦点を当てたマーケティングの戦略について解説します。

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1. データベース・マーケティング

データベース・マーケティングとは、顧客の個人情報や購買履歴などのデータを分析し、顧客に適した情報やサービスを提供するマーケティング手法をいいます。近年の情報技術の発達により、集計なしに1人ひとりの顧客データを容易に収集・保存できるようになったことから、顧客の差別化や個別化がますます重要視されています。

POSシステム(Point of Sale system:販売時点情報管理)は、商品の販売・支払いが行われるその場(販売時点)で、その商品に関する情報(商品名、価格、売れた時間など)を収集して、そのデータを経営に生かすためのシステムや手法です。

例えば、POSシステムに、後述するフリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP:ポイントカードなどの顧客カードを発行し、顧客の購買データをとらえながら、優良顧客の維持・拡大を図る手法)を組み合わせることによって、顧客の購買履歴を時系列的に収集することができます。インターネットでは、顧客のとったアクション(カタログ請求、問い合わせ、購買)はもちろん、購入前に閲覧されたページ履歴までが、ログ・ファイルに自動的に蓄積されます。これらの膨大なデータが集計されずに保存されているということは、1人ひとりの顧客を深く理解し、より効果的なマーケティングを実践するための情報があふれているといえるでしょう。

しかし、裏を返せば、このような個人レベルのデータから有用な知見や知識を取得しなければ、これらは保存に厄介な単なるごみと化し、情報にはなりえません。現在、多くの企業はこの大量のデータから有用な情報を抽出し、いかにマーケティングに利用するかということに行き詰まっています。

購買金額に基づいた、単純な一律還元ポイント・システムを考えてみましょう。現在、このシステムを通じて多くのスーパー、百貨店、航空会社が似たようなサービスを提供しているため、単なる値引き合戦による過当競争を生み出す結果になっています。企業はFSPを導入したのに利益が上がらないと首をかしげ、消費者は似たような競合企業のロイヤルティ・カードを数多く持ち、もはやロイヤルティの役目をなしていないことに困惑しています(図1)。

図1:多数のロイヤルティ・カード(イメージ)

図1:多数のロイヤルティ・カード(イメージ)

日本の大手家電量販店では、そのほとんどがポイントカード・システムを導入しているものの、これらのデータを利用し、顧客にお勧め商品などの提案を行っている企業はあまりありません。これは、宝の持ち腐れといえるでしょう。日々大量に集まる個人レベルのデータをどのように活用するかが、今後の企業競争力の明暗を分けるとも考えられます。

ここでの問題は、ハードの進歩にソフトの進歩がついていっていないことです。ハードで競合企業に追いつく、あるいは、競合企業にキャッチアップされるのは簡単です。同じ情報システム・ベンダーのシステムを取り入れればよいのです。ハードのみに頼っていては、最新のハードを導入する東南アジアの競合企業にもすぐに追いつかれ、逆に低賃金の優位性によって追い越されてしまいます。企業としての本当の競争優位は、製造業を含めてソフトで決まるといっても過言ではないでしょう。

2. 顧客ピラミッド

顧客ピラミッドとは、認知・購買意向・購買行動などに基づいて、顧客をセグメント分けしたものです。各セグメントのサイズを反映させると下位のクラスほど大きくなるため、ピラミッド形になります。顧客ピラミッドには、セグメント数の異なったいくつかのバリエーションが存在します。ここでは、図2に代表的な顧客ピラミッドを示します。

図2:顧客ピラミッドと売上貢献度(引用:阿部誠、大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる、KADOKAWA、2017)

図2:顧客ピラミッドと売上貢献度(引用:阿部誠、大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる、KADOKAWA、2017)

CRMが重要になってきた背景には、ごく少数の優良顧客が多くの売上に貢献しているという事実があるためです。これは、上位20%の顧客が売上の80%を占める80-20の法則と呼ばれ、所得や商品別売上の分布におけるパレートの法則やべき乗則としても知られています。上位集中の度合いを表す80-20は業界によっても異なり、日本やアメリカのスーパーマーケットの場合は、それぞれ、60-40と70-30ぐらいです。

限られた資源を有効に使うためにも、企業はより多くの利益をもたらす優良顧客を重視し、現時点での優良顧客のみならず、将来の潜在的優良顧客へのマーケティングにも力を入れるべきです(図3)。つまり、特定の既存顧客を維持することと新規顧客の獲得を、マーケティングROI(費用対効果)の観点からバランスよく行う必要があります。

図3:潜在的な顧客への投資も重要(引用:阿部誠、図解「大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる」、KADOKAWA、2018)

図3:潜在的な顧客への投資も重要(引用:阿部誠、図解「大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる」、KADOKAWA、2018)

3. フリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP)

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