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ダイカスト合金の種類と特徴:ダイカストの基礎知識2

ダイカストの基礎知識

更新日:2018年5月22日(初回投稿)
著者:ものつくり大学 技能工芸学部 総合機械学科 教授 西 直美

前回は、ダイカストの特徴と歴史を紹介しました。今回はダイカストに使われる合金を取り上げます。JISに規定されているダイカスト合金は、アルミニウム合金、亜鉛合金、マグネシウム合金の3種類です。その他に、銅合金、スズ合金、鉛合金なども用いられます。これらの合金の特徴や用途を解説します。

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1. アルミニウム合金ダイカスト

アルミニウム合金ダイカストは、軽量で耐食性に優れ、経年寸法変化が少ないことから、ダイカスト合金の中では最も多く用いられています。ダイカスト合金全体の97%以上を占め、多くの産業分野で使用されています。経済産業省が発表している生産動態統計によると、2017年のアルミニウム合金ダイカストの用途は、自動車用が89.3%、一般機械用が3.1%、自動二輪用が2.7%、電気機械用が1.6%です。ダイカスト用のアルミニウム合金地金は、JIS H 2118 ダイカスト用アルミニウム合金地金に規定されています。また、JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカストには、20種類のアルミニウム合金ダイカストと、その化学成分などが規定されています。

・アルミニウム合金ダイカストの種類と特徴

アルミニウム合金は、大きく分けてAl-Si系合金と、Al-Mg系合金の2種類があります。またAl-Si系合金は、Al-Si系、Al-Si-Mg系、Al-Si-Cu系に分類されます。日本で現在使用されている合金の多くはAl-Si-Cu系のADC12合金です。アルミニウム合金ダイカストの機械的性質、物理的性質を表1にまとめました。表1の機械的性質 (引張強さ、伸び、衝撃強さ、せん断強さ)は、ASTM(旧米国材料試験協会:American Society for Testing and Materials)規格で定められた試験片を理想的な条件で鋳造し、試験測定したものです。そのため、実際のダイカストの機械的性質よりも高い値を示しています。実体強度はASTM試験片の約7割といわれています。

表1:主なアルミニウム合金ダイカストの機械的性質・物理的性質(一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストの標準 DCS M<材料編>を基に著者作成)
JIS記号 ADC1 ADC3 ADC5 ADC6 ADC10 ADC12 ADC14
縦弾性係数(GPa) 71 ー  71 81.2
引張強さ(MPa) 290 320 310 280 320 310 320
伸び(%) 3.5 3.5 5  10 3.5 3.5 <1
衝撃強さ(kJ/m2) 79 144 202 316 85 81 38
せん断強さ(MPa) 170 180 200 190
比重 2.65 2.63 2.57 2.65 2.70 2.68 2.73
比熱(J/kg・℃) 963 963 963
熱膨張係数(×0-6/℃)
(20~200℃)
22 22 25 25 22 21 18

1:ADC1(Al-Si系)
ADC1は耐食性が良く、金型内での溶湯の流動性が高く鋳造加工しやすい(鋳造性が良い)ものの、耐力はやや低く、自動車のメインフレーム、フロントパネル、屋根瓦に用いられます。

2:ADC3(Al-Si-Mg系)
ADC3は衝撃強さと耐食性が良いものの、鋳造性に劣ります。自動車のホイールキャップ、二輪車のクランクケース、自転車のホイール、船外機のプロペラに用いられます。

3:ADC5(Al-Mg系)
ADC5は耐食性に非常に優れ、高い伸びと衝撃強さを示すものの、鋳造性に劣ります。農機具のアーム、船外機のプロペラ、釣り具のレバー・スプール(糸巻き)に用いられます。

4:ADC6(Al-Mg-Mn系)
ADC6は耐食性はADC5に近く、鋳造性はADC5より優れているものの、Al-Si系に比べると劣ります。二輪車のハンドレバー、ウインカーホルダー、ウォーターポンプ、船外機のプロペラケースに用いられます。

5:ADC10、ADC12(Al-Si-Cu系)
ADC10、ADC12は機械的性質と鋳造性に優れています。また、ADC10は被削性にも優れます。どちらも、アルミニウム製品のほとんど全てのものに用いられます。例えば、シリンダブロック、トランスミッションケース、シリンダヘッドカバー、農機具用ケース類、ハードディスクケース、電動工具、ミシンアーム、ガス器具、床板、エスカレータ一部品などです。

6:ADC14(Al-Si-Cu-Mg系)
ADC14は耐磨耗性に優れているものの、伸び、衝撃強さに劣ります。自動車のエアコン、シリンダブロック、ハウジングクラッチ、シフトフォークに用いられます。

・アルミニウム合金ダイカストの化学組成と金属組織

ダイカストの物理的性質は、合金の化学組成に影響します。ケイ素 Siは熱膨張係数を低下させることから、Al-Si系の合金ではケイ素 Siの量が多いほど熱膨張係数が小さくなります。また、Al-Mg系の合金はケイ素 Siの含有量が少ないため、熱膨張係数が大きく、割れが発生しやすくなります。図1に、代表的なアルミニウム合金ダイカストの金属組織を示します。

図1:代表的なアルミニウム合金ダイカストの金属組織

図1:代表的なアルミニウム合金ダイカストの金属組織

ADC6(図1の左)は素地のα-Al晶を持つAl-Mg系合金であり、流動性を改善するために微量(1.0%以下)のケイ素 Siが添加され、α-Al晶の境界にAl-Mg2Si共晶の晶出が見られます。Al-Si-Cu系合金のADC12(図1の中)は、α-Al晶と、周囲のAl-Si共晶組織、灰色で多角形のAl-Fe-Mn-Si系金属間化合物、灰色でやや微細なAl-Al2Cu共晶などが観察されます。過共晶Al-Si系合金のADC14(図1の右)は、多角形で暗灰色のケイ素 Siが初晶として晶出しています。また、周囲にはAl-Si共晶や、Al-Fe-Mn-Si系金属間化合物、Al-Al2Cu共晶などが観察されます。初晶ケイ素 Siは高い硬度を有するため、合金の耐摩耗性を向上します。

2. 亜鉛合金ダイカスト

亜鉛合金ダイカストは、薄肉で複雑な形状の鋳物が製造可能です。寸法精度が高く、優れた機械的性質を示します。特に衝撃に強く、めっきなどの表面処理性にも優れています。2017年の亜鉛合金ダイカストの用途は、自動車用が約56%を占めています。

・ダイカスト用亜鉛合金の種類と特徴

ダイカスト用亜鉛合金地金はJIS H 2201 ダイカスト用亜鉛合金地金に規定されています。また、JIS H 5301 亜鉛合金ダイカストには、Zn-Al-Cu系のZDC1と、Zn-Al系のZDC2の2種類が規定されています。使用されている合金の多くがZn-Al 系のZDC2です。なおJIS合金以外ではわずかに、金型用合金3種、ベリックなどの亜鉛合金ダイカストが使用されています。

表2に、亜鉛合金ダイカストのASTM規格試験片による、機械的性質および物理的性質を示します。機械的性質では、室温での伸びや衝撃強さが高いことが特徴です。特に衝撃強さは、ADC12の約20倍の値を示します。ただし、0℃以下の環境では、伸びや衝撃強さは低い値を示すため、寒冷地での使用には注意が必要です。-20℃での伸びは室温の1/2、衝撃強さは1/10になります。

表2:亜鉛合金ダイカストの機械的性質・物理的性質(一般社団法人日本ダイカスト協会、ダイカストの標準 DCS M<材料編>を基に著者作成)
JIS記号 ZDC1 ZDC2
縦弾性係数(GPa) 90 90
引張強さ(MPa) 328 283
伸び(%) 7 10
衝撃強さ(kJ/m2) 1610 1440
せん断強さ(MPa) 262 214
比重 6.7 6.6
比熱(J/kg・℃) 419 419
熱膨張係数(×10-6/℃)
(20~200℃)
27.4 27.4

1:ZDC1(Zn-Al-Cu系)
機械的性質および耐食性に優れています。ステアリングロック、シートベルト巻き取り金具、ビデオ用ギア、ファスナーつまみなどに用いられます。

2:ZDC2(Zn-Al系)
鋳造性およびめっき性に優れています。自動車のラジエターグリルカバー、モール、ドアハンドル、ドアレバー、PCコネクタ、自動販売機のハンドル、業務用冷蔵庫のドアハンドルなどに用いられます。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

3. マグネシウム合金ダイカスト

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

4. その他の合金

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