メニュー

金属疲労き裂とパリス則:破壊工学の基礎知識8

破壊工学の基礎知識

更新日:2018年6月7日(初回投稿)
著者:NDI Japan 代表 谷村 康行

前回は、さまざまな形状の部材で応力拡大係数を計算する方法を紹介しました。今回は最終回です。応力拡大係数を使いながら、金属疲労き裂の進展速度を求めるパリス則を解説します。まずは、金属疲労き裂進展の3段階を見ていきましょう。

今すぐ、技術資料をダウンロードする!(ログイン)

1. 金属疲労き裂進展の3段階

金属疲労は、材料強度と比較してはるかに小さな応力でも、繰り返し生じることによって、き裂が進展し破壊に至ります。疲労き裂の進展は、き裂の発生、き裂の進行、最終破断の3段階に分けられます(図1)。

図1:金属疲労き裂進展の3段階のイメージ

図1:金属疲労き裂進展の3段階のイメージ

第1段階では、き裂は金属結晶粒数個分のごく小さい範囲で発生し、応力方向に対して45度方向に傾いて進行します。この段階で、き裂を検出するのは、実際のところ不可能です。第2段階では、き裂は繰り返し応力に対して垂直方向に進行します。この段階では、疲労き裂の進展に対して何らかの対策を講じることができます。第3段階は最終破壊です。この段階のき裂は極めて速く進行するため、進行を食い止めることはできません。

2. S-N線図と疲労限度

金属疲労による破壊事故は、産業革命の時代から重要な問題として扱われ、多くの研究が行われてきました。その成果の一つが、疲労試験によるS-N線図です(図2)。疲労試験では、定められた条件下において、試験片に対し繰り返し応力を発生させ、破断するまでの繰り返し数をカウントします。S-N線図は、繰り返し応力(Repeated Stress)を縦軸に、繰り返し数(Number of Cycles)を横軸にしてグラフ化したものです。膨大な数の疲労試験を実施することで、S-N線図は作成されます。

図2:S-N線図と疲労限度

図2:S-N線図と疲労限度

S-N線図をデータに基づいて作成すると、分かることがあります。例えば、繰り返し応力が小さいと、破断するまでの繰り返し数は多くなります。これは、力が小さいので破断するまでに長い時間を要するという、常識的な感覚と一致します。また、鋼やチタニウム合金の場合、応力を小さくしていくと、繰り返し数を増やしても疲労破壊しない境界が現れます。この応力を、疲労限度と呼びます。使用する部材に対し発生する応力を疲労限度未満になるように設計すれば、理論上、疲労破壊は起こりません。

アルミニウム合金には、疲労限度が存在しないことが分かっています。そのため、疲労破壊を防ぐには、発生させる応力と一緒に使用時間(厳密には繰り返し数)を管理する対策が取られてきました。図3に、アルミニウム合金の疲労破断面の電子顕微鏡写真を示します。き裂の進行を示す、細かいしま模様(ストライエーション)が観察できます。

図3:アルミニウム合金(A7075)の疲労破断面に現れた細かいしま模様(ストライエーション)

図3:アルミニウム合金(A7075)の疲労破断面に現れた細かいしま模様(ストライエーション)

3. パリス則

S-N線図の分析から導き出された対策によって、疲労破壊事故は大幅に減らすことができました。しかし、完全になくなったわけではありません。材料が疲労に至る経緯をマラソンに例えるならば、S-N線図のデータによって分かるのは、マラソンがスタートしてからゴールするまでの時間です。途中のラップタイムや走行スピードは分かりません。

アメリカの破壊力学研究者であるポール・パリス(Paul C. Paris)は、1960年代に、疲労き裂進展速度を表すシンプルな式を発表しました。これは、応力拡大係数の概念を使って、疲労き裂進展の第2段階における進展速度を説明しています。この式を、パリス則と呼びます。

パリス則

左辺のda/dNは、き裂進展速度を表します。Nは繰り返し数を、aはき裂長さを意味し、それぞれに微分記号dが付いています。すなわち、dNは微小回数を意味し、この場合は繰り返し数1回当たりと考えてよいでしょう。daは微小なき裂進展長さです。繰り返し数を1回とすると、1回に進展するき裂展長さといえます。すなわち、da/dNは、単位繰り返し数当たりのき裂進展量を表し、その時点におけるき裂進展速度になります。

右辺のΔKは、応力拡大係数範囲を表します。Kは応力拡大係数を意味し、応力、き裂長さ、補正係数で成り立っています(第7回参照)。Δが付いているのは、き裂が開く側の応力拡大係数という意味です。引張と圧縮が繰り返されている場合、ΔKは、引張側の応力範囲に相当する応力拡大係数です。き裂進展速度da/dNを縦軸に、応力拡大係数範囲ΔKを横軸に取って、両対数グラフにすると直線になります。この直線の傾きがm、横軸1の切片の値がCです。Cとmは材料固有の値で、実験的に求められます。

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

4. パリス則を使った疲労進展予測

保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

  • セミナー8月
  • 寄稿募集
  • 基礎知識一覧
  • 販促サイト_海外展示会一覧

ピックアップ記事

tags

  • 特集バナー0702_01
  • 特集バナー0702_02
  • 特集バナー0702_03
  • 特集バナー0702_04