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作動油の種類と性質:油圧の基礎知識2

油圧の基礎知識

更新日:2018年4月10日(初回投稿)
著者:防衛大学校 システム工学群 機械システム工学科 教授 西海 孝夫

前回は、パスカルの原理と油圧システムを紹介しました。今回は、作動油の種類と性質について解説します。油圧機器では、油を媒体として流体動力が伝達されるため、作動油の性質を理解することが大切です。

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1. 作動油とは

作動油とは、油圧システムの中で、動力を伝達する媒体として使用される作動流体です。一般的に、以下のような特性が求められます。

  • 温度変化による粘度変化が少ない
  • 消泡性がある
  • 長時間使っても酸化しない
  • 防錆(せい)効果がある
  • 潤滑性・耐摩耗性がある
  • ゴム類を侵食しない
  • 燃えにくい

油圧システムによって、求められる作動油の特性は異なります。作動油の性質を理解し、油圧システムの種類に応じた適切な作動油を選択することが大切です。

2. 作動油の種類

作動油は、石油系作動油(鉱物系作動油)、合成系作動油、水溶性作動油(含水系作動油)に分類されます。また近年では、環境保護を目的とした生分解性作動油や、高含水作動液も開発されています(図1)。

図1:作動油の分類と種類

図1:作動油の分類と種類

・石油系作動油(鉱物系作動油)

石油系作動油は、精製した石油を基油(ベースオイル)として用いる作動油です。国内の油圧機器では最も多く利用されていて、一般作動油、耐摩耗性作動油、高粘度指数作動油などの種類があります。

一般作動油は、標準的な石油系作動油です。基油に、防錆(せい)剤、酸化防止剤、消泡剤を配合し、作動油としての特性を向上させています。防錆(せい)剤(Rust Inhibitor)のRと、酸化防止剤(Oxidation Inhibitor)のOを取って、R&O型作動油とも呼ばれています。

耐摩耗性作動油は、一般作動油に、極圧添加剤(高温高圧時に摩耗減少・焼付防止効果のある添加剤)や摩耗防止剤を配合した作動油です。高圧下において、互いの金属面の摩擦・摩耗の減少と焼付けを抑制します。高圧・高速な油圧システムでの使用に適しています。

高粘度指数作動油は、粘度指数(VI:Viscosity Index)が130以上の作動油です。粘度指数とは粘度の温度依存性を表す値であり、 数値が大きい作動油ほど温度による粘度変化が小さいことを示します。高粘度指数作動油は温度変化による作動油の粘度変化が少ないため、広範囲の運転温度で使用できます。油圧ポンプ起動時など低温での運転に適しています。

・合成系作動油

合成系作動油は、合成されたエステル、ポリグリコールなどを主な基油として用いる、難燃性作動油です。リン酸エステル系作動油、脂肪酸エステル系作動油などの種類があり、どちらも水溶性作動油より潤滑性に優れます。しかし、リン酸エステル系作動油は、ゴムや塗料に対する耐食性や、金属に対する耐腐食性に欠けます。また、脂肪酸エステル系作動油は、水分の混入に注意する必要があります。

・水溶性作動油

水溶性作動油は、主成分として水を含む作動油です。難燃性であり、火災対策のために開発されました。O/Wエマルション、W/Oエマルション、ポリグリコール溶液などの種類があります。O/Wエマルション(Oil in Water Emulsion)は、水の中に小さな油滴を分散させた乳濁液(エマルション)です。これとは逆に、W/Oエマルション(Water in Oil Emulsion)は、石油系作動油の中に小さな水滴を分散させた乳濁液状の作動油です。ポリグリコール溶液は、水を主成分として、不凍液にも利用されるグリコールやポリグリコールなどを加えた作動液です。

・生分解性作動油

生分解性作動油は、耐環境性に優れた作動油です。土壌に流出しても、バクテリアなどの微生物によって速やかに分解されるため、自然保護の立場から注目を集めています。生分解性作動油には、菜種油のような植物油を用いたものと、合成系基油を用いたものがあります。

・高含水作動液

高含水作動液は、水90~95%に対して鉱油やさまざまな添加剤を配合した作動油です。HWCF(High Water Contents Fluid)あるいは、HWBF(High Water Base Fluid)とも呼ばれます。乳濁状のW/Oエマルションと、透明あるいは半透明のソリューション(水に可溶な成分のみで構成された油)に分類されます。

3. 作動油の性質

作動油には、さまざまな物理的特性があります。表1に、石油系作動油と水の密度・動粘度・体積弾性係数・飽和蒸気圧・液中での音速を示します。

表1:作動油と水の比較
  石油系作動油
密度(kg/m3) 860 ~ 920 998
動粘度(mm2/s) 55 ~ 220 1.00
体積弾性係数(Pa) 1.4×109 ~ 1.9×109 2.06×109
飽和蒸気圧(Pa) 0.49 2.34×103
音速(m/s) 1300 1480

作動油の流体力学的性質として、密度、比重、粘度、動粘度、体積弾性係数、音速について解説します。

1:密度と比重

密度は、単位体積あたりの質量です。質量m、体積Vのとき、密度ρ=m/Vで表されます。密度ρのSI単位は、kg/m3です。

流体の密度は、圧力や温度によって変わります。一方、作動油は気体に比べて変化を受けにくいので、高圧下や過渡的な圧力変化の状況を除いて、密度が一定である非圧縮性流体と考えます(ρ=const.)。水の密度は、1atm、4℃において、ρw=1,000kg/m3です。また、比重は、水の密度ρwに対する流体や固体の密度ρの比をいい、比重s=ρ/ρwで定義されます。

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