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レーザ加工の原理:レーザ加工の基礎知識1

レーザ加工の基礎知識

更新日:2018年8月29日(初回投稿)
著者:関東職業能力開発大学校 生産機械システム技術科 能開准教授 永野 善己

レーザ加工とは、レーザ光を材料に照射して加工を行う方法です。レーザと聞くと、スター・ウォーズのライトセーバーや東京タワーのライトアップなどを想像するのではないでしょうか? レーザ(Laser)は、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字を取った合成語です。日本語では、放射の誘導放出による光の増幅という意味になります。第1回となる今回は、レーザやレーザ加工の原理について学びましょう。

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1. レーザと波長

1960年に米国の物理学者セオドア・メイマンが、人工ルビーを用いて赤色のレーザ発振に成功しました。レーザ発振の成功は、太陽の中心より明るいアトミック・ラジオ光と名付けられて発表されたようです。レーザは太陽光よりも優れた光線であるという意味です。レーザ光の特徴には、連続したきれいな波であること、鋭い指向性を持つこと、エネルギー密度の高い光源であることの3つが挙げられます。

太陽光(自然光)は、1つの波(波長)ではなく、無数の波が集まったものです。さまざまな波長の光が混ざっています。それに対してレーザは、1つの波(波長)で出来ており、連続したきれいな波です。また、レーザは鋭い指向性を持ちます。指向性とは、直進性が強く広がらないという性質です。指向性の高いレーザを集光レンズで絞ると、極めて高いエネルギー密度の光源が得られます。高いエネルギー密度の光源により穴あけや切断などのレーザ加工が可能になります。レーザには、波長によってさまざまな種類があります。図1に電磁波の分類とレーザ波長について示します。

図1:電磁波の分類とレーザ波長

図1:電磁波の分類とレーザ波長

電磁波は、電気と磁気の2つの性質を持った波です。波長の違いにより赤外線、可視光線、紫外線に分けられます。私たちが光と呼ぶのは、可視光線です。色の違いは、波長の違いです。レーザ光には、X線から赤外線まで広い波長域が使用されています。レーザポインタが赤く見えるのは、可視光線の中でも赤色の波長領域のレーザ光を用いるためです。金属の加工に利用されるCO2レーザ加工機の波長は10.6μmであり、レーザ光は見えません。波長が変わるとレーザの種類が変わるだけでなく、材料がレーザを吸収する割合などが変化します。よって、レーザ加工における波長は、重要な要素です。

2. レーザ加工とは

指向性の高いレーザ光を集光レンズで絞ると、極めて高いエネルギー密度の光源が得られます。レーザ加工とは、その高いエネルギー密度のレーザ光を利用して、金属などの加工を行うことです。金属や非金属に対して、切断、穴あけ(ピアシング)、溶接などができます。その他に、焼入れ、電子基板の穴あけ、マーキングなどにも使われます。レーザ加工の特徴には、集光することで精密加工が可能、非接触加工で材料に対してゆがみや熱影響が少ないこと、材料の硬さに左右されないことが挙げられます。

レーザ光をレンズにより絞ると微小スポット径となり、半導体や電子部品の精密加工が可能です。レーザ加工は、非接触加工であり材料にゆがみや熱影響を与える割合が小さくなります。切削加工は、材料を刃物で直接切削をする接触加工であることから、ゆがみを与え、残留応力などにより材料を変形させる場合があります。レーザ加工は、レーザ光を利用して材料を溶融させながら穴あけや切断を行うため、材料の硬さに左右されません。

製造業における加工以外にも、レーザ加工は、衣服の裁断、木材の加工(図2)、彫刻、装飾、医療分野で使われています。

図2:木材のレーザ加工の例

図2:木材のレーザ加工の例

3. レーザ加工の原理

レーザ加工の原理は、エネルギーの吸収、振動・分散、飛散という3ステップに分けられます(図3)。CO2レーザなど、赤外線領域のレーザ加工では、材料表層がレーザ光を吸収します。レーザ光が材料に吸収されることにより、原子・分子が振動し、さらに共鳴振動によって熱伝導が起こります。レーザ加工は、材料がレーザ光を吸収して熱伝導するまでの過程で急激に発熱することを利用した熱加工です。例えば、金属における穴あけ(ピアシング)は、レーザ照射により焦点近くで溶融・蒸発を起こした金属を、アシストガスの強力な噴射ガスで飛散させて除去する加工法です。溶融金属を飛散させた後、新生面にレーザが照射されて、再び溶融が起きます。穴あけ(ピアシング)は、これを繰り返して、ビーム強度の強い中心部から下へ掘り下げます。

図3:レーザ加工の原理

図3:レーザ加工の原理

4. レーザ加工の利点と欠点

レーザ加工は、熱を利用して穴あけや切断を行う加工方法です。熱を利用した切断方法は、レーザ切断以外にも、ガス切断やプラズマ切断などがあります(図4)。ガス切断は金属と酸素ガスとの反応熱を利用して金属を切断する方法です。プラズマ切断は、プラズマガスをアーク放電で高温状態にして、その熱で切断を行う方法です。

図4:ガス切断(左)とプラズマ切断(右)

図4:ガス切断(左)とプラズマ切断(右)

ガス切断、プラズマ切断、レーザ切断の特徴を、表1にまとめました。レーザ切断は、ガス切断やプラズマ切断と比較してコストは高いものの、精度が優れています。切断できる材料の厚さは、レーザ加工機の出力により制限されます。レーザ加工機の利点や欠点を踏まえて、利用しましょう。

表1:ガス切断、プラズマ切断、レーザ切断の比較
  ガス切断 プラズマ切断 レーザ切断
切断材料 軟鋼 軟鋼、アルミ、ステンレス、銅、導電材料 軟鋼、アルミ、ステンレス、銅、樹脂、木材など
切断速度 遅い やや速い 速い
切断精度 1mm単位の加工 0.5mm単位の加工 0.5mm単位の
細かな加工
切断範囲
(軟鋼基準)
4~6,000mm 2~150mm 1~30mm、薄板
切断面傾斜度 最良
切断コスト
(設備費用含む)
安い 比較的安い やや高い

5. レーザ加工機が使用するレーザの種類

レーザ加工機には、さまざまな種類のレーザが使われています。代表的な気体レーザは、CO2レーザやエキシマレーザです。固体レーザには、YAGレーザやファイバーレーザがあります。その他、自由電子レーザ、液体レーザ、半導体レーザなども利用されます。表2にレーザの種類を示します。

表2:レーザ加工機が使用するレーザの種類
白色顔料 励起方法 特徴
固体レーザ
(例:YAGレーザ、ファイバーレーザ)

・比較的小型で高出力、短パルス

・尖頭出力(パルス当たりの出力)を大きくできる

液体レーザ
(例:色素レーザ)

・波長を連続的に変化できる

・色素の種類が多く、広い波長域で動作

気体レーザ
(例:CO2レーザ、エキシマレーザ)
放電

・ビーム集光性が良い。パルスでの高繰り返しが可能

・広い波長域に多数の発振線がある

半導体レーザ
(例:GaNレーザ)
放電

・小型で集積化が可能

・高効率・長寿命で安定

自由電子レーザ 電磁加速

・波長を自由に変えることができる

エキシマレーザは紫外線領域のレーザで、波長が193~351nm です。CO2レーザ、YAGレーザファイバーレーザは、赤外線領域のレーザです。レーザの波長は、CO2レーザは10.6μm、YAGレーザは1.06μm、ファイバーレーザは1.07μmです。金属や非鉄金属の加工には、従来CO2レーザやYAGレーザが使用されてきました。最近はファイバーレーザも、使用されています。CO2レーザとファイバーレーザは比較される場合が多く、銅の加工はファイバーレーザの方が得意であり、木材などの非鉄金属の加工はCO2レーザの方が得意なようです。エキシマレーザは、医療の分野でも使用されています。

いかがでしたか? 今回は、レーザとレーザ加工機について解説しました。次回は、代表的なレーザ加工であるピアシング(穴あけ)を取り上げます。お楽しみに!

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