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組織開発でよくある失敗例:組織開発の基礎知識6

組織開発の基礎知識

更新日:2022年6月3日(初回投稿)
著者:神戸大学 大学院経営学研究科 経営学専攻 教授 鈴木 竜太

前回は、AI(Appreciative Inquiry)の手法による組織開発を紹介しました。最終回となる今回は、組織開発でよくある失敗例を取り上げます。変革や組織開発の失敗の背景には、人間は現状に不満があったとしても、それなりにうまくいっていることを変えるには、抵抗を感じるという性質があります。例えば、自分の性格のある部分を直したいとしても、容易に直せるものではありません。個人ですらそうなのです。組織全体の習慣を変えたり、考え方を変えたりすることは、膨大なエネルギーを必要とし、決して簡単ではありません。

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1. 組織開発の失敗のパターン

第1回で説明したとおり、組織開発が組織変革と異なるのは、人を入れ替えたり、強制的に人々の行動を変えたりするのではなく、組織メンバー自らが主体的に変わっていくことで、組織もより良い方向へと変わっていくと考えている点にあります。組織開発は組織全体で行っていくものです。しかし、組織メンバー全てが、必ずしも等しく自ら主体的に変わろうと思うものではありません。早々に主体的に変わろうと考える人もいれば、これまでのやり方や考え方に何の問題もないと考えて、抵抗する人や受動的に考える人もいます。ここに失敗の遠因があります。

失敗パターン1:組織内の意識の差

一つ目の失敗パターンは、組織開発に積極的な人と、そうでない人の考え方の差異が決定的に大きくなり、うまくいかなくなるというケースです。よくある例では、人事部など組織開発の主導者である一部の人だけが盛り上がって、組織開発の主人公である他の組織メンバーとの間に意識の差ができてしまうといったことが挙げられます(図1)。

図1:組織内の意識の差

図1:組織内の意識の差

・組織のために良いことをしているという主導者との意識の差

組織開発は人間主義的なスタンスを取ることもあり、組織開発を主導する人や部署にとって、組織開発を進めていくことは人員整理などとは異なり、組織全体のためにもなると考えます。従って、自分は組織や組織メンバーにとって良いことをしているという意識が強くなりがちです。しかし一方で、先に述べたように、組織メンバーの中には、現状で問題がないと考えている人たちがいます。また、そもそも自分たちを変えていくということに消極的な人たちがいます。そのため、たとえ良い方向への変革であったとしても、組織開発を主導する側の思いが効果的に伝わり、多くの同意を得られるとは限りません。

とはいうものの、主導する担当者や部署は、それを推進していくことが仕事です。組織メンバーが消極的だからといって止めるわけにはいかず、さらに新しい試みや取り組みを進めていきます。結果的に、一部の人だけが盛り上がっているという状況が生まれてしまいます。

・自分たちの成果になる主導者との意識の差

組織開発を主導・推進する人々にとって、組織開発を推進していくことは、自分たちの業績や成果になるのに対して、他の多くのメンバーにとって、それ自体は日々の成果につながるとは限らないということです。そして、推進者が主体的に進めれば進めるほど、それ以外のメンバーが受動的となり、やらされ感だけが増えていくという結末を迎えてしまいます。

・組織開発の深みにはまった主導者との意識の差

また、このような温度差が生まれてしまう要因として、組織開発を推進する人が暴走してしまうことも挙げられます。組織開発は、実践的にも学術的にも、さまざまな考え方や方法が考案、蓄積されている奥深い取り組みです。推進者は進めていく上でそれらを学ぶことになり、学べば学ぶほど、沼にはまるように組織開発の信奉者になっていきます。そのため、次から次へと取り組みを導入し、現場を混乱させたり、さらなる温度差を生んだりしてしまうことがあります。

そうなると、組織開発はうまくいかなくなります。しかし、それを受けて推進者はさらに取り組みを増やし、なんとか成功させたいと考えるようになります。もちろん、そのことでうまくいくこともあります。しかし、多くの場合は、さらなる温度差を生んでしまうという悪循環に陥ってしまいます(図2)。

図2:組織開発推進者と組織メンバーの意識の乖離(かいり)

図2:組織開発推進者と組織メンバーの意識の乖離(かいり)

失敗パターン2:トップが関与しない

もう一つの失敗例は、トップが関与しないケースです(図3)。一般的に組織開発は、コンサルタントが介入する、しないにかかわらず、推進する部署が組織内に作られ、その部署や担当者が、組織開発の推進を一手に担います。しかし、先に挙げたように、その取り組みだけでは温度差が生まれやすくなります。何より、他の業務とは異なり、組織メンバー全てに関わる取り組みなので、全体の意識が重要になります。そのため、トップが取り組みに対して理解を示し、組織全体に積極的な参加を促すことが、推進の成否を決める重要なポイントになります。

図3:トップが関与しない

図3:トップが関与しない

例えば、推進グループが頑張って推進の取り組みを進めても、トップがそれを軽視すれば、当然ながら全体の意識は低くなります。なぜなら、そこに組織開発に対する本気度が伝わらないからです。また、組織開発で示される、より良い方向が、トップの意向とは別のものであれば、当然ながらうまくいきません。特に、組織開発がトップの号令ではなく、その推進グループの発案によりスタートした場合には、それに対するトップの関与をまず引き出さないことには、取り組みは組織全体に波及しません。

いずれの失敗にせよ、組織開発の基本的なスタンスである「組織メンバーが主体的に変わっていく」という側面が取り組み方によって失われてしまいます。とはいえ、それを避けるために、推進者がさらに強引に進めていったり、あれやこれやと取り組みを重ねたりすれば、さらにメンバーの主体性が失われてしまいます。いわゆる「やらされる組織開発」になり、エネルギーだけが失われることになりかねません。

2. 組織開発を失敗しないために

続きは、保管用PDFに掲載中。ぜひ、下記よりダウンロードして、ご覧ください。

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