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表面処理技術:プラズマ処理の基礎知識5

プラズマ処理の基礎知識

更新日:2021年1月29日(初回投稿)
著者:東京都市大学 総合研究所 客員教授 市川 幸美

前回は、プラズマならではのエッチング技術を説明しました。今回は、プラズマによる材料の表面改質にスポットを当てて解説します。金属の表面硬化や樹脂材料の接着性・塗装性の改善において、プラズマ処理は重要な技術になっています。これらの技術の概要に加えて、こうした処理に適した新しいプラズマ源として期待されている低温大気圧プラズマジェットについて、その原理を紹介します。

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1. 金属表面のプラズマ処理

プラズマ処理とは、プラズマを用いて材料表面の洗浄や改質、コーティングなどの処理をすることです。機械装置の軸受など、回転部品に用いる鋼材(鉄鋼やステンレスなど)には、耐摩耗性が要求されます。しかし、通常の鋼材では表面硬度が十分ではないので、炭素Cや窒素Nを取り込むことで表面を硬化させる手法が用いられています。例えば、表面を炭化する方法としては、数100℃に熱したメタンCH4などのガス雰囲気中で数10時間処理する「ガス浸炭法」が古くから用いられていたものの、処理時間が長く浸炭むらがあり、ステンレス鋼に使えないといった欠点がありました。

これらの欠点を克服すべく登場したのがプラズマです。まず、処理する鋼材を真空容器に入れ、減圧してCH4などの炭素を含むガスを流します。次に、鋼材を陰極にしてグロー放電を生成すると、プラズマ中で発生した炭素を含むイオンやラジカルが鋼材に取り込まれ、表面からの炭化が効率よく進みます。特にイオンは、グロー放電の説明で登場した陰極降下部の高電界で加速されて鋼材に打ち込まれ、より効果的に取り込まれます(第2回)。その結果、鋼材の温度が同じ場合には、処理時間が半分程度に短縮され、しかも浸炭むらも改善されるなどの利点があります。

例えばガスをさらに、N2とH2の混合ガスに換えれば、プラズマによる表面窒化処理ができ、表面硬度は3倍程度に向上します(図1)。このように、現在では金属表面の耐摩耗性を改善するために、プラズマ処理はなくてはならない手法になっています。

図1:表面窒化処理をした歯車

図1:表面窒化処理をした歯車

2. 低温大気圧プラズマジェット

低温大気圧プラズマジェットとは、大気圧において生成される低温のプラズマジェットのことをいいます。これまで紹介してきたプラズマは、真空容器にガスを供給して減圧下で放電させるものが主流でした。半導体のように汚染を嫌うものや、面内における膜厚・膜質の高度な均一性を要求されるものでは、こうした装置が必須になります。しかし、大きく立体的な材料を処理しようとすると、真空装置ではさまざまな制約が生じます。もし、スプレーガンのように大気圧下でプラズマを照射できる装置があれば、プラズマ処理の用途が大きく広がります。では、どのようにしたらそのような装置が実現できるでしょうか。ヒントは、第2回で紹介したバリア放電にあります。バリア放電を用いると、大気圧でも低温の非平衡プラズマが生成できることを説明しました。この放電を利用すれば、安定した扱いやすいプラズマ源を作ることができます。

まず、Paschen(パッシェン)の法則から説明を始めます。パッシェンの法則とは、火花放電が起こる電圧(火花電圧)に関する法則です。間隔dの平行平板電極に電圧を印加して放電させた時の絶縁破壊電圧(放電開始電圧)VBは、ガス圧をpとするとpdの関数となり、図2に示したようなカーブで表されます。VBが最小になるpdの値は1~10(Torr・cm)(ガスにより異なります)となり、大気圧(760Torr)の場合でも、dを1mm以下にするとpdの値は数10Torr・cm以下になり、VBは数100Vになります。このように、大気圧でも放電空間を小さくすれば、比較的低電圧で放電が起こります。

図2:種々のガスにおける放電開始電圧(VB)とpd(p:ガス圧、d:電極間隔)の関係

図2:種々のガスにおける放電開始電圧(VB)とpd(p:ガス圧、d:電極間隔)の関係

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3. 高分子材料のプラズマ処理

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