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半導体とは:半導体の基礎知識1

半導体の基礎知識

更新日:2020年9月30日(初回投稿)
著者:長岡技術科学大学 名誉教授  産学官連携研究員 内富 直隆

1948年~1949年にかけて、アメリカのベル研究所のジョン・バーディン、ウォルター・ブラッテン、ウィリアム・ショクレーによるトランジスタの発見で、エレクトロニクスの主役がそれまでの真空管から半導体になったことは広く知られています。1980年代には、日本がSi半導体メモリで世界のトップメーカーとなり、半導体立国といわれました。それから既に30年以上がたち、半導体を取り巻く環境も大きく変わってきました。本連載では、全6回にわたり、半導体の基礎知識を解説します。第1回は、半導体の基礎についての全体像を説明します。

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1. 金属と絶縁体

もし、あなたがスマートフォンやパソコンの中をのぞいて見る機会があれば、多くの半導体部品が使われていることに気付くでしょう。いうまでもなく、屋根の上の太陽光発電や自動車の制御など、身の回りのあらゆる所に半導体が使われています。しかし、電気を通す金属や電気を通さない(通しにくい)ガラスなどの絶縁体は、直接目に触れて分かりやすいものの、いざ半導体となると、導体の半分とは何だろう? と疑問を持つかもしれません。そのような疑問に対して、少し専門的な立場から解説するのが、この連載の目的です。まず、身近にある金属と絶縁体について見ていきましょう。

図1は、導体(金属)、半導体、絶縁体の電気伝導率(比抵抗)による物質の分類を表します。金属は電気を通す材料、絶縁体は電気を通しにくい材料です。その違いは電気抵抗の違いから来ています。電気抵抗率の順にいうと、導体である金属が最も低く、続いてシリコン、ゲルマニウムなどの半導体、そして、ガラスやゴムなどの絶縁体が最も高くなっています。

図1:電気伝導率(比抵抗)による物質の分類

図1:電気伝導率(比抵抗)による物質の分類

電気伝導率による物質の分類を説明するモデルとして、固体中の電子のエネルギーを表すバンド理論があります(図2)。バンド理論とは、結晶中の電子の振る舞いを表す理論です。身近な結晶は、多くの原子配列から構成されています。一方、電気の流れを担う電子の動きは、バンド理論から生じる伝導帯と価電子帯に関係しています。このエネルギー・バンド図を用いれば、金属と絶縁体、そして半導体を定性的に説明することができます。

図2:バンド理論による金属、半導体、絶縁体の違いを示す模式図(黒丸は電子を表し、E<sub>F</sub>はフェルミエネルギーを表す)

図2:バンド理論による金属、半導体、絶縁体の違いを示す模式図(黒丸は電子を表し、EFはフェルミエネルギーを表す)

一般に、価電子帯までは電子が占有し、伝導帯は電子が空の状態になっています。そして、伝導帯と価電子帯の間には、電子が存在しない禁制帯(バンドギャップ)が生じています。このバンド図の中で、どこまで電子が占有できるかを、フェルミエネルギー(EF)と呼ばれるエネルギーで表します。通常フェルミエネルギーは、バンドギャップの中央に存在します。

金属では、このフェルミエネルギーが価電子帯あるいは伝導帯の中にあるため、電子は外部から電界がかかると運動エネルギーをもらい、自由に動くことができるようになります。その結果、電流が流れやすい導体になります。一方、絶縁体では、価電子帯の電子は結晶中の原子を相互に結合する役割があり、結晶構造に関係しています。この場合、フェルミエネルギーはバンドギャップの中にあり、価電子帯の電子を伝導帯に移す(励起する)ためには、大きなエネルギーが必要です。このように、電子が自由に移動できる伝導帯が空の状態にある物質は、絶縁体になります。

それでは、半導体はどうでしょうか。半導体も、フェルミエネルギーがバンドギャップの中にあるので、絶縁体に分類されます。しかし、半導体はこのバンドギャップのエネルギーが0.5から2eV(エレクトロン・ボルト)程度と、比較的小さな値を持つ材料に相当します。こうしたエネルギーの小さなバンドギャップを有することで、電子の人為的な制御が可能になり、多くの絶縁体の中でも特に半導体と呼ばれる材料に変身することができるようになります。

このようなバンド構造の違いから、金属中では温度の上昇によって結晶の骨組み(格子)と電子の衝突が盛んになり、電気抵抗が大きくなることで電流が流れにくくなります。一方、半導体の場合は、電子が熱エネルギーをもらって価電子帯から伝導帯に励起することで、自由に動く電子数が増加して電気抵抗が減少することから、電流が流れやすくなります。

2. さまざまな半導体材料

表1は、半導体を構成する主要な原子の部分を周期表から抜き出したものです。半導体材料の代表は、シリコンSiとゲルマニウムGeです。これらは、周期表でIV族元素に属する単一元素からなる半導体で、炭素Cも同様です。

表1:半導体を構成する原子(元素の周期表の一部を示す)

表1:半導体を構成する原子(元素の周期表の一部を示す)

図3は、代表的半導体であるシリコンSiとガリウムヒ素GaAsの結晶構造と格子定数を表します。Si結晶では4個のSi原子から構成される共有結合した正四面体構造が、1つの単位としてつながったダイヤモンド構造をしています。このような結晶の骨格は、前述したバンド構造で価電子帯を構成しています。

図3:代表的半導体であるシリコンSiとガリウムヒ素GaAsの結晶構造と格子定数(赤の破線は四面体構造を示す)

図3:代表的半導体であるシリコンSiとガリウムヒ素GaAsの結晶構造と格子定数(赤の破線は四面体構造を示す)

1947年には、これらの半導体によって電流を制御するトランジスタが発明されます。トランジスタの実用化により、エレクトロニクスの主役はそれまでの真空管から半導体に移行し、今に至っています。一方、Siが不得意な発光する半導体として、III族元素とV族元素から構成されるIII-V族半導体があります。ガリウムヒ素GaAsは、Si原子の位置をIII族のGa原子とV族のAs原子で交互に置き換えた閃亜鉛鉱(せんあえんこう)構造となります。このような化合物半導体には多くの種類があり、その代表的なインジウムリンInPや窒化ガリウムGaNは、高周波デバイスや光デバイスとして広く利用されています。

特に、青色発光ダイオードやレーザに用いられるGaNは、日本の研究者(赤﨑勇、天野浩、中村修二)がノーベル賞を受賞した半導体としてよく知られています。また、これらの半導体では、結晶中を移動する電子の速度がSiに比べて速いことから、マイクロ波やミリ波領域の情報通信インフラを支える半導体としても活用されています。高電圧を制御する電力用の半導体としては、広くSiが使われています。しかし、さらなる高電力素子としてIV族同士の化合物であるシリコンカーバイドSiCの利用が始まっており、IV族半導体の炭素からなるダイヤモンドも有力な候補となっています。太陽光発電でも、よく利用されるSiの他に、さらに太陽光の光吸収係数が大きなCuInS2やCuInSe2など、カルコパイライト型半導体をベースにした多元系半導体が知られています。これらの化合物半導体では、(III族+V族)や(II族+VI族)などを2で割るとIV族半導体に類似した構造になり、これはグリム-ゾンマーフェルトの規則と呼ばれています。

半導体は無機材料に限らず、半導体的な性質を示す有機材料として、有機半導体(OSC:Organic Semiconductor)があります。代表的な有機半導体材料として、芳香族化合物であるペンタセンやアントラセンなどがあり、ベンゼン環のパイ電子が電気伝導に寄与しています。さらに、高い伝導度を示すヨウ素を添加したポリアセチレンの発見は、ノーベル賞(白川英樹)につながりました。このように、用途によってさまざまな有機半導体が開発されており、フレキシブルな半導体として電子ペーパーなどへの活用が期待されています。

3. 半導体結晶の作り方

半導体デバイスの作製には、単結晶基板(ウエハ)と半導体薄膜を使う必要があります。このようなウエハを製造するためには、まずチョクラルスキー法(CZ法)によって、ウエハの元になる単結晶インゴットを作ります。CZ法の模式図を、図4に示します。

図4:半導体バルク結晶の作製方法における引き上げ装置の断面図、Si半導体のチョクラルスキー(CZ)法

図4:半導体バルク結晶の作製方法における引き上げ装置の断面図、Si半導体のチョクラルスキー(CZ)法

高品質な多結晶SiやGaAsを石英るつぼ(シリコン単結晶を製造する上で溶融シリコンを高純度に保つ容器)で溶かし、棒状の種単結晶を接触させて回転させながら徐々に引き上げることで、種結晶と同じ結晶方位を持つ円柱状の単結晶インゴットが形成されます(図5)。

図5: SiインゴットとSiウエハ

図5: SiインゴットとSiウエハ

このインゴットを整形し、数ミクロン間隔で薄くスライスした後、鏡面研磨することでウエハを作製することができます。現在、シリコンでは直径が12インチ(300mm)の大きなSiウエハが作られています。そして、このウエハの表面にトランジスタなどの半導体デバイスが形成されます。億単位のトランジスタを集積するチップとなるSi半導体のウエハは、99.999999999%(11N:イレブン・ナイン:9が11個並ぶことからこのように呼ばれています)以上の超高純度で量産されています。

一方、光半導体デバイスや高周波デバイスの製造では、GaAsウエハの表面にヒ化アルミニウムガリウム(AlGaAs)など、さまざまな組成の単結晶半導体薄膜が結晶成長されます。その際、基板の結晶の格子定数がそろっていることが重要です。このような薄膜の結晶成長をエピタキシャル成長と呼んでいます。薄膜半導体が基板と同じ結晶の場合はホモエピタキシー、異なる半導体材料ではヘテロエピタキシーと呼びます。半導体のエピタキシャル薄膜を作製する代表的な方法として、化学気相成長法(CVD法:Chemical Vapor Deposition)や、分子線エピタキシー法(MBE法:Molecular Beam Epitaxy)があります。

CVD法では、成長室に作製する半導体の原料ガスを供給し、これを熱やプラズマなどによって分解し、基板表面で化学反応を起こさせることで結晶成長を行います。成長する半導体の種類によって、さまざまな方式のCVD法が用いられています。Si半導体では、原料ガスをプラズマ化するプラズマCVD法が使用されています。青色発光ダイオードや高周波デバイスに用いられているGaNなどでは、有機金属気相成長法(MOCVD法: Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて製品の量産化が進められています。

MBE法は、新しい半導体結晶の研究や、半導体を組み合わせた量子構造の研究に用いられてきました(図6)。10-10Torr以下の超高真空状態の成長室で、PBN(超高純度セラミックス)るつぼに充填した固体原料を原子状に蒸発させ、基板結晶上で一層ずつ原子層を積み上げて薄膜結晶を成長させるものです。この方法で、半導体レーザや高電子移動度トランジスタ、新しい磁性半導体などの研究も行われ、特にトンネルダイオードの研究はノーベル賞(江崎玲於奈)の受賞につながりました。半導体デバイスは、まず半導体結晶の制御でその性能が決まってくるため、量産に適した結晶成長はますます重要になっています。

図6:半導体薄膜の作製方法、GaAs薄膜を作製する分子線エピタキシー(MBE)法

図6:半導体薄膜の作製方法、GaAs薄膜を作製する分子線エピタキシー(MBE)法

いかがでしたか? 今回は、半導体と金属、絶縁体との性質の違いや、さまざまな半導体の種類、半導体結晶の作り方を通して、半導体の全体像について解説しました。次回は、n型半導体とp型半導体を解説します。お楽しみに!

 

参考文献

株式会社東芝、改訂新版 カラー版 図解半導体ガイド、誠文堂新光社、2007年
内富直隆、半導体が一番わかる、技術評論社、2014年

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