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空間デザインの基礎知識

空間デザインの基礎知識

著者:東京都市大学 都市生活学部 教授 高柳 英明

住宅や商業施設を設計することにおいて、空間デザインを検討するには、さまざまな知識や経験が必要です。特に、2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的にソーシャルディスタンスの確保が必要となりました。飲食店などの店舗やリモートワークに対応するため、空間デザインの社会的役割が求められています。本連載では、6回にわたり、空間デザインの基礎知識を解説します。今回は、空間の広さについて紹介します。

第1回:住居・空間の「ひろさ」について

1. 最適な空間サイズを体感レベルで知ろう

住宅設計を進めていると、クライアントから、こういう家具を置きたい、バスタブはこのメーカーのものを使ってほしいといった、個別のインテリアエレメントに関する詳細な要望が多く出てきます。一方で、肝心の居室の広さについての意識はあいまいで、12.9m2と伝えてもピンとこないことがほとんどです。この場合、8.4畳など、なじみのある畳数で伝えることで、初めておおよその広さ感を判断してもらえるようです。

古くからある日本家屋は、尺貫法に基づく横縦3×6尺(900×1,800mm)の畳による定尺ユニットで部屋の広さが決まっています(図1)。これは、日本人の人体寸法にあった寸法システムとして利用され続けたため、畳数を基準に空間サイズを考えるのはごく自然なことです。

図1:尺貫法に基づく伝統的な日本家屋の例

図1:尺貫法に基づく伝統的な日本家屋の例

しかし、現代住宅は、およその間取りが洋室で設計されるので、この定尺則から外れて自由に設計していいはずです(図2)。それならば、現代住宅における広さの尺度とは何かと考えると、団らんの寸法に帰着するのではないかと考えます。団らんの寸法とは、具体的には、家族が集まって座ることができるソファセットと、リビングテーブル、テレビ、サイドテーブルなどから構成される領域を指します。

図2:尺貫法に基づかない現代住宅の例(出典:(C)太田拓実写真事務所 ※(C)はCを丸で囲んだ著作権マークを表す)

図2:尺貫法に基づかない現代住宅の例(出典:(C)太田拓実写真事務所 ※(C)はCを丸で囲んだ著作権マークを表す)

著者は建築デザインをする傍ら、大学でインテリアデザインを教えています。毎年、学生には、理想の住宅をプランニングせよという、少し横着な課題を出題しています。すると多くの学生が、……

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2. 会話環から見る最適な空間サイズ

団らんの寸法からデザイン分野の調査研究データを重ねてみると、直径約3mの会話環(カンバセーションサークル)に合致します(図4)。

図4:居室における会話環

図4:居室における会話環

直径約3mという寸法は、日本人の平均身長からリサーチされた結果です。海外の人は身長が高く、家具寸法も大きいため、会話環は3.3〜3.4mになります。この環の内側に、家族や身近な間柄にある人間同士が集まると、最も会話がしやすく、かつ相手の表情を視覚的に認識し、空気を読むなど、会話に頼らないノンバーバル・コミュニケーションが可能になります。さらにこの会話環は、人間が相互に親密さを維持しながら集合体を構成する、適正な最小サイズであるともいえます。デメリットとしては、これで家族会議などを開いたときは、1人だけ安易に中座しにくいことでしょうか。

会話環は、しっかり理解すれば、応用の利く便利な物差しになります。家族のリビングルームに接客の機能を明確に持たせたい場合は、大小入れ子(あるものの中に、それと同じ形や種類で一回り小さいものが入っている構造)になった2重の会話環の構成を当てはめます(大きい方の会話環の直径は約5m)。部屋のサイズを大きめに設計し、家族で使う際は部屋の一角のみを使って、来客時やホームパーティーを開く際には部屋全体を使います。

また、3m会話環の組み合わせ方によって、……

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第2回:空間の心理的な「ひろさ感・心地よさ」

前回は、人間工学的な見地から、住居・空間の「ひろさ」について、レイアウト例を示しながら解説しました。今回は、環境心理的な「ひろさ感」を取り上げます。

1. 窓の開け方と「ひろさ感」

窓を開けることにより、光や換気、外観を取り入れることができる他、ひろさ感を得るという効果があります。部屋は、必要となる広ささえあれば十分だとする場合はさておき、多くの人は、限りある敷地や住戸面積に対し、より広く感じたいと思うものです。ここでは、物理的な空間寸法以上の「ひろさ感」を得るにはどうしたらよいかを考えてみましょう。

図1は、スモールオフィス付き賃貸型集合住宅の西側に開けられた窓の写真です。住宅密集地に建てられているため、眺望も景観も期待できず、すぐ手前には隣地建物の壁が見えてしまいます。

図1:窓前の「間(ま)」をひろさ感として利用する

図1:窓前の「間(ま)」をひろさ感として利用する(出典:(C)太田拓実写真事務所 ※(C)はCを丸で囲んだ著作権マークを表す

こういった壁面に窓を開けるとき、通常は、換気窓として必要最小限にするものです。しかし、この事例では、隣地建物の外壁までの間(ま)を、視覚的なひろさ感として利用しています。しかも西日の直射を避け、照壁(しょうへき:日光を反射し、部屋の採光に作用する壁)効果によって柔らかな採光を得ている上、隣地建物の窓からの視線も気になりません。そのため、日中ならカーテンを開け放して、あたかも自分の部屋が延長したようなひろさ感を楽しむことができます。窓台に観葉植物などを置くことで、さらに素敵な部屋になるのではないでしょうか。

図2も、窓によるひろさ感の確保に気を使って計画した賃貸集合住宅の事例です。専有面積が61m2しか取れず、2LDKの間取りクラスとしては少々狭めです。そこで、思い切って水回りエリアと居室エリアを一直線に並べ、東西両端を全面掃き出し・ハイサッシ窓を備えたバルコニーとしました。

図2:直線的な視線の抜けをひろさ感に生かす

図2:直線的な視線の抜けをひろさ感に生かす

バルコニーの手すりには、鉄でできた格子状のスノコであるグレーチング素材を用い、外部視線に配慮しています。こうすることで、……

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2. 天井高の高低と「心地よさ」

ここでは、天井高の高い、低いに対する人間の環境心理に着目します。天井高の高低は、人が感じる心地よさとどのように関係しているのでしょうか。図4は、天井高に差を持たせるようにデザインされた、住宅のリビング・ダイニングルームの断面図です。

図4:天井高の大小と空間の心地よさの関係

図4:天井高の大小と空間の心地よさの関係

天井の高さは、垂直方向の開放感と関係しています。しかし、食事をする場合などを考えると、どの場所もただ高いだけでは、開放的すぎて落ち着きません。また、全てが低い天井だと、圧迫感を感じます。住宅では、食べる空間、寝る空間は天井を低めにし、憩う空間、くつろぐ空間は高めにするなど、エリアや居場所ごとに差異を持たせた方が、空間全体としての心地よさが向上します。図5は、天井高に差異を持たせた2つの空間のつながりに対し、人間がどのような環境心理を感じるのかを実験した事例です。16パターンの実験空間を用意し、ロジット感性評価実験という方法によって、どのパターンが最も心地よい差異であるかを調査しています。

図5:天井高の差異に見られる空間心理評価実験

図5:天井高の差異に見られる空間心理評価実験

その結果、2種類の天井高が2.4m、3.0mと、高さの差が60cmである場合において、双方の良さが際立ち、最も心地よいと評価されました。一般的な住宅の天井高は2.4~2.6mなので、低い側を2.4mとして、高い側を2.6mからさらに40cm高くします。これにより、2種類の天井高を持つ空間連接による、心地のよいリビング・ダイニングエリアを構成できます。

同じ原理を、飲食店舗などにも応用してみましょう。商業テナントでは、……

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第3回:キッチン空間を考えよう

前回は、環境心理的なひろさ感を紹介しました。今回は、食の空間、キッチンを取り上げます。

1. 使い方に応じたキッチンスタイル

キッチンは、専門的にはキッチン・ワークトップと呼ばれます。まさに調理のための作業台です。既製のキッチンは、調理のための基本所作に基づき設計されています。

しかし、注文住宅の場合、クライアントの要望に沿って設計を行います。そのため、各所の寸法取りに留意しなければなりません。まず、ワークトップの高さです。日本産業規格(JIS)では、800・850・900・950mmを基準高として扱っています。平均的な日本人の身長を考慮すると、850mmを標準とし、使う人の身長だけでなく使用感も考慮しながら、800〜950mmの域で調整することが一般的です。調整単位は、必ずしも50mm刻みである必要はありません。例えば、筆者の知る事例として、身長169cmの女性クライアントは920mmのワークトップ高を「ちょうどよい」として、毎日使用しています。

ワークトップのスタイルには、最もオーソドックスなI型、L型のほか、U型やアイランド型などさまざまな種類があり、それぞれ使い勝手のよさや特徴があります(図1)。

図1:基本的なキッチンスタイル

図1:基本的なキッチンスタイル

1人で調理する場合に最も効率がよいのは、冷蔵庫、シンク、コンロが一直線に並んだI型です。冷蔵庫から食材を取り出し、シンクで洗ってまな板で刻み、コンロで煮炊きするという、一連の動作がリニア(直線状)に展開できます。対してアイランド型では、調理時に効率的なリニア挙動はできません。代わりに、2、3人が同時にキッチンに立ち、同時にダイニングカウンターと相対しながら会話できるなど、家族全員による調理と食事のひとときを楽しむことができます。

近年の住宅設計では、……

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2. キッチンの作業動線と空間サイズ

キッチンの作業動線について考えてみましょう。図3に、I型キッチンとII(ダブルアイ)型の作業動線を示します。

図3:キッチンのワーク・トライアングル

図3:キッチンのワーク・トライアングル

調理に必要な基本要素は、冷蔵庫(A)、シンク(B)、コンロ(C)の3つです。作業者は、作業動線としてこれらを都度移動しながら調理を行います。調理に集中しているうちは気にならないものの、これらの距離が互いに離れすぎていると、積算運動量が多くなり、肉体的な疲労感が増大します。特に、A-B(冷蔵庫-シンク)間、B-C(シンク-コンロ)間は頻繁に移動するため、ワン・ツー・スリーとテンポよく移動できる2歩半程度の距離、すなわち1,300mm以下にとどめておくのがいいでしょう。

これは、他のキッチンスタイルにも同様に適用されます。I型キッチンの場合は、図3の上図を、それ以外の場合は、下図のII型に当てはめて作業動線の寸法を確認してください。

図4は、アイランド型とペニンシュラ型のキッチン空間全体の空間サイズを表します。中央に大きなキッチンの島を呈したアイランド型では、……

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第4回:空間の明るさについて考えよう

前回、キッチン空間の設計について紹介しました。今回は、空間の明るさについて説明します。

1. 生活照明の基本

蛍光灯やLEDバルブなどを使い分け、空間を過不足なく照らし、生活所作に支障をきたさないように計画するのが照明計画です。建築面積が500m2を超えるような中規模集合住宅や商業店舗などの照明計画では、専門の設備設計士が関与・分担します。しかし、150m2以下の戸建住宅クラスの設計では、ほとんどの場合、意匠設計者が照明計画も行います。そのため、不慣れな場合は、照明の基本を押さえておくとよいでしょう。

JISでは、住宅環境の照度基準として、勉強部屋などの机上面照度で750Lx(ルクス)、リビングルームなど、だんらん空間の照度は約250Lxを必要としています。また、通路や階段室など、足元を照らす程度でよい場所では10Lxあれば十分です。住宅居室内の場合、照度に関する法定規則はないため、この基準を目安に照明機器を選定・設置検討するとよいでしょう。また、照明器具にはそれぞれ配光データ(光の広がり方や、照度分布を示したカタログデータ)が示されています(図1)。これを参照し、適切な照明器具を選定します。

図1:照明器具の配光データ

図1:照明器具の配光データ

配光曲線図とは、照明器具からの光がどの方向へどれだけの強さ(光度)で出ているのかを示します。左図の光度(cd)は、光源の光束(Lm)が1,000Lmの場合の値を表します。水平面照度曲線図は、照明器具の光の広がり方向と、照度(Lx)の関係を示したものです。縦軸に光源高、横軸に水平距離をとり、光源高における直射水平面照度を求めます。1/2の照度角とは、光源の直下照度の1/2の照度になる点と光源中心を結んだ線、そして光源中心の鉛直方向線とのなす角度をいいます。

生活照明は、……

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2. 「明るさ」と「明るさ感」

物理的な明るさと、人間が感じる明るさ感は違うものであることを理解しておくことは重要です。図3は、左右どちらもの図も、同じ空間を同じダウンライト12灯で照らしています。ただし、右の方が明るく感じる空間になっています。

図3:照明によるウォールウォッシュ効果の比較

図3:照明によるウォールウォッシュ効果の比較

違いは配光角度にあり、左図は狭角タイプで床のみを照らしているのに対し、右図は壁面にも当たるよう、広角タイプを用いています。同じ照度でも、壁を照らすとより明るく感じる傾向があります。これは、光で壁を洗うように照らしているので、ウォールウォッシュ効果と呼ばれます。

しかし、明るい方がよいというばかりではなく、……

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3. 照明の組み合わせによる空間効果

全般照明、局部照明の組み合わせによって、どのような空間効果が得られるかについて、具体的に紹介しましょう。図4に、リビングルームに異なる照明を用いた3つの例を示します。

図4:リビングルームの照明と空間印象

図4:リビングルームの照明と空間印象(引用:Aiprah(著)、河村容治(監修)、超図解で全部わかるインテリアデザイン入門(増補改訂版)、エクスナレッジ、2019、図は筆者作成)

左図は、リビングルームを全般照明のシーリングライトのみで照らした場合です。家具やインテリア要素の陰影が少なく、部屋全体が平たんで趣に欠ける印象になっています。対して中央図は、ダウンライトとフロアスタンドを組み合わせ、くつろぎの空間をうまく演出しています。これはダウンライトのウォールウォッシュ効果による壁面への明暗付けと、フロアスタンドによる明るさの重心下げが効用しています。また、右図は、ブラケットライトとフロアボールを組み合わせ、同様にくつろぎの空間としての趣を呈しています。これはブラケットライトによる優しい間接光と、フロアボールによる明るさのアクセント付けが効いているためです。

ダイニングルームでも同様に考えられます。図5は、……

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第5回:空間の色彩について考えよう

前回、空間の明るさと照明計画について紹介しました。今回は、空間の色彩計画を取り上げます。

1. 黄金色彩比とイメージテイスト

住宅の性能を決定づける要素としては、広さ(広さ感)、高さ(天井高)、使い勝手などの建築計画が重要になります。しかし、これらの要素は意識することはできても、目で見て感じることができません。一方、色彩計画は、常に視覚的に映り、その人の気分や感性、環境心理を左右します。そのため、色彩計画は、建築計画と同様、住宅の性能を決定づける重要なポイントとなります。

色彩計画は、色を扱う技術職能です。一見、難しそうに感じられるかもしれません。しかし、次に紹介するいくつかの定理を知っていれば、理解するのは難しくありません。

秀逸な絵画や彫刻作品に見られる黄金比のように、空間の色彩計画にも同様の考え方があります。これを、色彩黄金比と呼びます。色彩黄金比の比率B:M:Aの内訳は、配色比率(70:25:5)の法則によって規定されます(図1)。

図1:色彩黄金比の比率

図1:色彩黄金比の比率

Bはベースカラーといって、インテリアを構成する要素のうち、最も広い視野面積を占める色です。多くの場合、壁・天井の色彩に当たります。Mはメインカラーといって、Bに次いで主要なインテリアエレメントを構成する色です。図2では、フローリングや、家具のウッドカラーが相当します。Aはアクセントカラーといって、絵画でいうところの差し色に該当します。

図2:黄金色彩比(BMA比率)の概念図

図2:黄金色彩比(BMA比率)の概念図

住宅設計におけるインテリアは、日常的に目に触れて過ごします。そのため、視覚的に自然で、落ち着きのある風情を持っていなければなりません。過度に刺激的で、非日常的なBMA比率では、心理的に疲れて、飽きてしまうでしょう。一般的には、……

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2. イメージテイストとは

イメージテイストとは、色、形、素材の組み合わせにおける典型を、人々の共通意識や文化背景、価値観やライフスタイル、または趣味嗜好などによってまとめたものです(表1)。これは、多くの人が共通認識のうちに理解できる基準となります。人は誰しも、好みのインテリアイメージを持っています。しかし、気軽に試着できる服飾ファッションと違い、インテリアコーディネートでは、そのイメージをあれこれ試すことが困難です。そのため、イメージテイストのコーディネーション体系を利用します。

表1:よく使われるイメージテイスト例
テイスト名称 特徴 代表的な色・素材の
リファレンス
ナチュラル シンプルで自然、随所に木材を現しで用い、見た目にも手触り的にも温かい印象 ホワイトアッシュの家具、コットン素材のファブリック、ウッドフローリング、アクセントカラーにグリーン・イエロー系の自然色
モダン 都会的で無機質、金属やガラス素材を用い、直線的かつ硬質な男性的な印象 革張りのソファ、大理石貼りの床、クロームメッキ仕上げのコーヒーテーブル、ベースカラー・メインカラーともにモノトーンの色調
ミッドセンチュリー 1960年代の居住像を模した、多様な色彩・素材を用いる個性的かつ現代的な印象 ブライウッドのチェア、プラスチック素材のインテリア小物、柄のあるタペストリー、奇抜なデザインの照明器具、アクセントカラーに高彩度オレンジやレッドを用いる
畳・木材・竹などの素材を使い、和室様式に現代的なエレメントを加えた、伝統的かつ落ち着いた印象 畳敷き、ヒノキ材シェードの照明器具、塗り壁、真壁仕上げ、アクセントとして床の間の生花・装飾物や漆器などのアクセサリーを用いる
クラシック 硬質木材を使い、重厚で華美な装飾の家具を多様した格調高い印象。イングリッシュトラッド、ヨーロピアントラッドなどがある 装飾天井、オーク材の重厚なダイニングテーブル、アンティークシャンデリア、パーケットフローリング、メインカラーにダークウッド
北欧 カラフルな色彩や、合理的・実用的デザイン家具を多様しつつも、自然素材を用いたシンプルかつ優しい印象 ウッドブラインド、ウッドキャビネット、壁に鮮やかな色を乗せる、実用的なキッチンウェア、自然をモチーフにしたファブリックや観葉植物をアクセントとして用いる
その他

  • キュート
  • シック
  • シノワズリー
  • カジュアル
  • エレガント
  • Beauty-Sweet
空間側から特徴づけるのではなく、人間のライフスタイル、趣味嗜好に基づき、年代を追ってアレンジが加え続けられている

イメージテイストのうち、どれか特定のスタイルをモデルとして、アレンジを加えていくとよいでしょう。例えば図4は、……

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第6回:商業空間について考えよう

前回は、空間の色彩計画を紹介しました。今回は、最終回です。商業空間デザインについて解説します。住み手が誰なのかが設計時点で分かっている住宅設計と違い、商業空間の場合は、その主役も、業種も、店構えも千差万別であり、標準的な正攻法がありません。しかし、本稿で紹介する要点を押さえておくことで、実ケースに応じた良好なプランを作成できるでしょう。

1. 「業種・店構え」ごとのデザイン要点

基本的な商業空間のデザインは、表1のように、業種・店構えを考慮して進めます。

表1:商業空間「業種・店構え」別のデザイン要点の一覧
種別 要点
業種 飲食業 提供メニューが主役。適切な客単価、回転率、座席数を主として計画を進める。同時にスタッフ動線・厨房配置も含めて検討。また、ジャンルや雰囲気に合わせたインテリアデザインが求められる
物販業 商品が主役。CC(カスタマーコンタクト)、UX(ユーザーエクスペリエンス)を高めるインテリアデザインが重要視される。食品販売では、鮮度・美味しさを引き立させるよう、色彩計画に配慮する
サービス業 サービスが主役。顧客との距離感、顧客相互の距離感、雰囲気づくりを重視。特にレジャー・アミューズメント店舗では、単独/複数客によって照明計画が変わってくる。また、衣料品販売ではストックスペース/ゴールデンスペースの確保が重要
店構え 単独・路面店 徹底した差別化効果を狙う他、地域性・近隣住民とのつながりも重要になる。郊外立地の場合は駐車場確保も必須
ショッピングセンター
・百貨店
複合による相乗効果を図る。季節ごとのテーマディスプレイやイベントなどの集客要素を受容できる空間にしておく
GMS量販店 広く簡潔な通路計画とし、豊富な在庫空間の確保の他、顧客のザッピングのしやすさ、会計の手間軽減などにも配慮する
EC併用店舗 ECサイトでは得にくい対面コンサルテーションや、強いイメージ訴求力、ライフスタイルイノベーション要素が求められる

・業種別によるデザイン要点

業種には、いわゆる商業三業と呼ばれる飲食業、物販業、サービス業があり、それぞれ主役が違います。飲食業では提供メニューが主役であり、それを提供する際の客単価や回転率、座席数や雰囲気に合わせたインテリアなどに配慮します。物販業では商品が主役です。商品へのCC(カスタマーコンタクト)や、リピート率を左右する品ぞろえなどへのUX(ユーザーエクスペリエンス:製品やサービスを通してユーザーが感じる使いやすさ、印象といった体験)を重視します。また、サービス業では提供されるサービスが主役です。サービサー(サービスを提供する人)と顧客、あるいは顧客相互の距離感や雰囲気作りに注視します。

・店構え別によるデザイン要点

店構えの一例である、単独・路面店では、徹底した差別化効果を狙います。フレンドリーな店構えにするなど、単独店舗ならではの独自性を出し、また、近隣との有効な関係構築にも寄与しなければなりません。

ショッピングセンターや百貨店では、さまざまな店舗が並ぶので、複合効果が期待できます。しかし店舗規模が大きくなればなるほど、……

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2. 次の世代に必要な商業空間デザイン

商業空間デザインの技術は、スピーディーかつ実利的なソリューションスキルです。店舗のインテリアデザイン程度であれば、法的なハードルも低いため、最短で1〜3か月あれば、企画構想、実施設計、現場施工が済んでしまいます。逆に、そのくらいスピーディーに進めないと、社会の消費トレンドに追いついていけず、売れない商業店舗をデザインしてしまうことにもなりかねません。一方、業界内においては、そうしたスピーディーさに起因して、過去の秀逸なデザインに対する科学的分析や、有用ノウハウの蓄積が希薄になっているようにも感じます。

本来、インテリアデザインは、人間行動学とセットで考えると非常に興味深いデザイン科学であり、奥深く、探求しがいのある職能分野です。筆者は大学で、癒やし・もてなし・賑(にぎ)わいといった人間の感性と行動特性に寄り添うインテリア空間・建築デザインを、都市生活科学として探求しています。中でも興味深く、次世代に向けて可能性を秘めていると思うのは、人の流れと商業空間の科学です。

図1は、大規模商業店舗の顧客行動を模擬した群集流動シミュレーションです。人を歩行速度別の色で表現した球体で模し、AI技術などを用いて自然な買い物行動をするようにプログラミングしています。売り場フロアを普通の速度で歩いて回る人や、立ち止まって商品に見入る人、すり足速度で品定めする人など、多様な行動が見て取れます。

図1:大規模商業店舗での群集流動シミュレーション

図1:大規模商業店舗での群集流動シミュレーション

ここで興味深いのは、16通りのフロアプランを試したところ、升目の細かいプランの方が、売り場面積減であっても総カスタマーコンタクトタイムが増大したことです。実際の売り場で16通りも試すわけにはいきません。そのため、こうしたデジタル環境でのシミュレーション解析を、顧客混雑マネジメントや、ユーザーエクスペリエンス評価に用いることで、安全安心の商業空間デザインが可能になります。

ここ数年、世の中は大きく変わりました。突然訪れたアフターコロナ、ウィズコロナ社会は、従前の、集まることを是(ぜ)とした商業空間のあり方をも大きく転換させました。また、私たちの都市生活のサスティナビリティ対応にも、いよいよ本腰を入れて取り組まねばなりません。

交通のMaaS化(複数の公共交通を1つの移動サービスとして提供すること)や、歩行者ITS化(ITを用い、歩行者、車椅子使用者、自転車などに、安全・快適・利便な移動環境を提供すること)、スマートシティ推進を背景として、マイクロモビリティ導入を代表とする歩車融合の公共空間も実現するでしょう。これらについても同様に、商業空間デザインは過不足なく対応しなければなりません。

図2、図3に、電動キックスクーターなどのマイクロモビリティに乗ったまま、……

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