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ばねの種類と特徴:ばねの基礎知識1

ばねの基礎知識

更新日:2018年10月12日(第2版)
著者:國井技術士設計事務所 所長 國井 良昌

ばねは、ねじの次に使用頻度の高い機械要素です。自動車や自転車からデジタルカメラ、ボールペンなど、身近な機械製品、精密機器、日用品に使われています。そして、ばねに関する実践的な知識も、機械設計には不可欠です。技術者が押さえておきたい、ばねの基本を解説します。第1回では、ばねの種類や加工法を説明します。

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1. ばねの種類と特徴

機械要素には、ねじ、ばね、軸、軸受、ベルト、チェーン、カム、リンク機構など、多くの種類があります。ばねは、ねじに次いでよく使われます(参考:機械要素の学び方、ねじの基礎知識1)。当事務所のクライアント企業の協力を得て、ばねの使用頻度を調べたところ、コイルばねと板ばねの利用が多く、全体の65.1%を占めていました(図1)。

図1:ばねの使用頻度ランキング

図1:ばねの使用頻度ランキング(引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.153)

代表的なばねを、簡単に紹介します。コイルばねとは、線材(各種素材あり)をつる巻き(コイル)状に巻いたばねのことです。板ばねとは、金属板の弾性変形によるエネルギー吸収と、復元によるエネルギー放出を利用したばねです。1枚の板でできているシンプルな平板ばね、複数枚を重ねた重ね板ばねがあり、板の厚さも用途によって幅があります。トーションバーとは、棒状の金属をひねった時の反発力を利用したばねです。自動車のサスペンションなどに使われています。皿ばねとは、中央に穴の開いた円盤状の板を、薄い円すい型に変形させたものです。平たい形状なので、大きな荷重を受けることができます。ねじの緩み防止の座金、ボールベアリングのガタを抑える部材として使用されます。

次に、表1のばねの呼称を見てみましょう。コイルばねは、圧縮コイルばね、引張コイルばね、ねじりコイルばねの3種類に大別できます。これらは教科書や専門書に記載される正式名称で、実際には、現場用語で呼ばれることも多くあります。表1内の太文字の表記は、特に現場でよく使われる呼称です。正式名称だけでなく、現場での呼称も覚えておきましょう。

表1:ばねの呼称一覧表(太字は現場で主流の呼称。引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.153)
専門書の呼称現場用語英語での呼称
圧縮コイルばねばね、圧縮ばね
コンプレッションばね
コンプレッション・スプリング
Compression Spring
引張コイルばね引張ばね
テンションばね
テンション・スプリング
Tension Spring
Extension Spring
ねじりコイルばねねじりばね
トーションばね
トーション・スプリング
Torsion Spring
板ばね板ばねFlat Spring
トーションバートーションバーTorsion Bar

2. コイルばねの種類と用途

コイルばねは、圧縮コイルばね、引張コイルばね、ねじりコイルばねの3種類に大別できます。各コイルばねについて、詳しく解説します。用途に注目すれば、意外と身近な製品にも組み込まれていることが分かるでしょう。

1:圧縮コイルばね

圧縮コイルばね(圧縮ばね)とは、ばねが圧縮する方向に荷重を受けると、反発力が発生するコイルばねのことです。等ピッチコイルばねと、円すいコイルばねの2種があります(図2)。等ピッチコイルばねは、自動車のサスペンション、ノック式ボールペン、スプリングベッド、スーツケースのキーロックなどに使用されます。円すいコイルばねは、電池ケース内の接点ばね(マイナス側)、フットスイッチ、省スペース用ばねなどに使用されています。

図2:圧縮コイルばね

図2:圧縮コイルばね

2:引張コイルばね

引張コイルばね(引張ばね)とは、ばねが伸張する方向に荷重を受けた時に、反発力が発生するばねのことです。ばねの両端に、垂直方向のフック部が付いた形状です(図3)。自転車のスタンド、自動車のハンドルブレーキと後輪のブレーキ間、回転ブレーキ、計量器などに使用されています。

図3:引張コイルばね

図3:引張コイルばね

3:ねじりコイルばね

ねじりコイルばね(ねじりばね)とは、コイルが中心軸周りにねじりモーメントを受けた時に、反発力が発生するコイルばねです。ばねの両端が水平方向に延びたかたちで、両端にフック部があるものと、ないものがあります(図4)。回転式ドアロック、デジタルカメラの回転式電池ぶた、穴あけパンチなどに使用されています。

図4:ねじりコイルばね

図4:ねじりコイルばね

3. コイルばねの加工法

コイルばねの加工法を見てみましょう。各種コイルばねは、ばね専用の材料を線状に加工したもの(線材)を用いて製造します。代表的な線径は、φ0.1~14mmです。図5は、生産数が少ない場合のコイルばね(圧縮ばね、引張ばね)の生産工程を、簡易的に解説したものです。

図5:コイルばね(圧縮ばね、引張ばね)の加工工程

図5:コイルばね(圧縮ばね、引張ばね)の加工工程(引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.155)

工程1・線材を加工機にセット、工程2・コイリングを詳しく見てみましょう。生産数が少ない場合や、大量生産品の試作の場合は、旋盤によく似た加工機にシャフトをチャッキング(固定)し、シャフトの外周に手作業で線材を巻いていきます(図6)。コイリング作業は常温で行われ、これを冷間加工と呼びます。大量生産の場合、線材の供給から取り出す際の線材のカッティングまで、全自動化されています。

図6:手作業によるコイリング

図6:手作業によるコイリング(ばねの少量生産や、ばねの試作のほとんどがこれで製造されている)

冷間加工の圧縮ばねの場合、工程3・フォーミングマシン、工程4の焼入れ・焼戻しを飛ばし、工程5の低温焼なましに入ります。ここで残留応力を除去し、工程6で圧縮ばねの端部に研削を施します。線径がφ0.16~1.0と細い圧縮ばねの場合は、クローズドエンド(研削なし)が多いです。これに対し、線形がφ1.0以上では、クローズドエンド(研削あり)が多くなります。クローズドエンドとは、ばねの端部の巻だけ角度を変える巻き方のことです。この後は、圧縮ばねも引張ばねも共通で、ショットピーニング、低温焼なまし、セッチング、検査を経て完成です。

加工工程で着目すべきは、へたりを防止するための工程が複数設けられていることです。図5では、全10工程のうち、5、7、8、9の4工程がへたり防止のための工程です。つまり、コイルばねはへたりやすいのです。ここが、製造工程から学ぶ実務知識です。

4. 引張コイルばねの種類

引張コイルばね両端のフック形状は、多岐にわたります。形状ごとに、注意点も異なります。引張コイルばねの代表的な形状は、丸フック、逆丸フック、半丸フック、Vフック、Uフック、角フックの6種です(図7)。

図7: 引張コイルばねの各種フック形状と実務知識

図7: 引張コイルばねの各種フック形状と実務知識(引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.159)

図7にも記述したとおり、引張コイルばねのフック部は破断しやすく、トラブルが慢性的に起きています。フック部の安全率を、通常の3倍以上に設定している企業もあります。こうした知識を深め、用途ごとに最適な機械要素を選べるようになりましょう。

いかがでしたか? 今回は、ばねの中でも使用頻度の高いコイルばねを中心に解説しました。次回は、板ばねの種類と加工法を学びましょう。お楽しみに!

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