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静電気とは?:静電気対策の基礎知識1

静電気対策の基礎知識

更新日:2018年12月5日(初回投稿)
著者:工学院大学 工学部 電気システム工学科 准教授 市川 紀充

静電気とは、物体に蓄えられた電荷や、その電荷によって引き起こされる現象のことです。日本では秋から冬にかけて、乾燥すると、静電気が発生しやすくなります。モノづくりの現場において静電気は、放電が爆発の原因となったり、電気・電子機器の性能に影響を与えたり、ごみやほこりを付着させたりと、さまざまな問題を引き起こします。本連載では6回にわたり、静電気対策の基礎を解説します。初回となる今回は、静電気の発生原理とその防止策、放電の種類を取り上げます。

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1. 静電気の発生原理

静電気が発生する身近な例を考えてみましょう。ノートに挟んでいた下敷きを取り出すときに、ノートの紙が下敷きにくっつきます。また、セータを脱ぐときに、バチバチと静電気を感じることも多いでしょう(図1)。スーパーの新しいレジ袋が広げづらかったり、床のほこりや髪の毛が引き寄せ合いながら集まるのは、静電気の力によるものです。静電気は、冬に発生すると思われがちですが、エアコンを使用した室内では、年中発生しています。

図1: 静電気の代表的な例

図1:静電気の代表的な例

静電気は、2つの物質を擦ること、剥がすこと、接触させることで発生します。プラスに帯電している物質と、マイナスに帯電している物質を接触させると、ぱっと見、帯電していない状態に戻ります。ところが、お互いの物質からプラス、マイナスの電荷が漏えいし、2つの物質がプラス、マイナスに帯電した状態になっています。帯電していた人が座っていた椅子に座ったり、セーターを脱ぐことで、静電気が起こるのは、帯電によるものです。室内を歩くことでも、静電気が発生しています。

製造業において、静電気はトラブルになることもあれば、静電気を活用した技術もあります。電子部品の製造工場では、静電気はデバイスを破壊することがあり、その結果歩留まりが悪くなります。液晶ディスプレイの製造工場では、フィルムを剥がすときに静電気が発生し、ほこりが付着すると、製品不良になります。静電気は、PCなどの電子機器の誤動作や故障の原因になったり、静電気の放電により爆発が起きることもあります。静電気の活用例としては、コピー機や自動車の静電塗装の技術です。火を使わずに水素やガソリンに着火させることができ、電気集じん機にも使われています。 静電気は、魔術師の使う魔法のように、問題にもなり、有効活用もできるのです。

2. 静電気の防止

プラスやマイナスの電荷は、肉眼では見ることはできません。人体に発生する静電気を防止するには、帯電した物体に触れないこと、静電気を蓄積しないことが大切です。電気・電子部品の工場では、人体の帯電を防止するためにリストストラップや静電服、静電靴を着用しています(図2)。静電服や静電靴を着用して歩いたときの帯電電圧は、Tシャツと短パンを着用して歩いたときよりも低くなります。

図2:リストストラップ・静電服・静電靴

図2:リストストラップ・静電服・静電靴

静電服、静電靴などで人体の静電気を防止するのに加えて、帯電防止床を使用すると効果的です。アクリル板の誘電体は、シートを剥がすときや、アクリル板の上に置いた金属の箱を持ち上げたときに静電気が発生します。アクリル板上の静電気は、時間の経過とともに低下し除去されます。相対湿度が高くなると、電荷の漏えい抵抗が小さいので、帯電したアクリル板から静電気が除去される時間は短くなります。界面活性剤の使用も有効です。

また、湿度を上げることで、静電気の発生を防止することができます。湿度を上げると、空気中の水分子の密度が高くなります。ほとんどの水は電気を通すので、物体の電荷が放出・漏洩されやすくなり、溜まりません。子供のころ、下敷きを頭にこすり、髪の毛を逆立たせて遊んだことがあるでしょう(図3)。髪の毛を湿らせると、静電気は起きにくくなり、髪の毛も立たなくなります。

図3:下敷きと髪の毛による静電気

図3:下敷きと髪の毛による静電気

3. 放電の種類

人体が蓄積できる電荷量は限られており、無限に蓄えることはできません。物質が持つ電荷量が大きくなると、放電が発生します。2つの物質を擦ることや剥がすことで発生する静電気の放電には、火花放電やコロナ放電、ブラシ放電、沿面放電、コーン放電があります(図4)。

図4:放電の種類

図4:放電の種類

火花放電の例は、金属のドアノブに触れたときに、帯電した人の指先とドアノブ間で発生する放電です。ビリっと感じるはずです(図5)。コロナ放電は、鍵のような鋭利な導体でドアノブに触れるとき、火花放電が発生する前に発生する放電です。帯電した人が持った鋭利な箇所で発生します。ブラシ放電は、接地された導体が、帯電した不導体に近づくときに生じるブラシ状の放電です。沿面放電は、接地した導体の上に置いた薄い不導体の帯電量が大きくなったときに、接地された導体を近づけることで、不導体の表面に沿って生じる放電です。コーン放電は、粉粒体をタンクに入れるとき、堆積した粉粒体の中央付近から接地された側壁方面に向かって間欠的に発生する放電です。

図5:コロナ放電の例

図5:コロナ放電の例

各放電の有する静電エネルギーを大きいものから順に並べると、沿面放電、火花放電、コーン放電、ブラシ放電、コロナ放電となります。静電気の放電は、ガソリンに着火させるだけでなく、水素ガスを爆発させる原因にもなります。コロナ放電は、この中で最もエネルギーが小さく、暗闇でぼんやりしか見えない発光です。コロナ放電でガソリンが着火することはないものの、水素が着火する可能性はあるので、静電気や放電には十分な注意が必要です。

いかがでしたか? 今回は、日常的な静電気の発生例を紹介しつつ、静電気の発生原理、静電気の防止策、放電の種類を説明しました。次回は、静電気で生じる事故や、その事例や傾向について解説していきます。お楽しみに!

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