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熱エネルギーを動力に変換する方法:熱工学の基礎知識1

熱工学の基礎知識

更新日:2020年7月1日(初回投稿)
著者:信州大学 名誉教授 平田 哲夫

熱工学は、熱機関を用いて熱エネルギーを動力に変換する原理や、冷凍機を用いてエアコンの低温を発生させる原理などを学ぶ機械系の専門分野です。熱が高温から低温部分へ伝わる際の熱移動の法則も学びます。本連載では、全6回にわたり、熱工学の基礎知識を解説します。第1回は、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する熱機関の原理を説明します。

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1. 熱エネルギーの変換装置

熱エネルギーを動力や電力に変換する方法は、主に以下の3つです。

・高温熱源として、ガソリンや軽油などの燃料を燃焼させた際に発生する高温高圧の燃焼ガスを利用します。一方、低温熱源としては大気を用いて、熱機関(内燃機関やガスタービン)で動力を生み出します。

・燃料の燃焼熱や地熱などのエネルギーを利用して高圧の蒸気を作ります。その蒸気でタービンを回して動力を生み出します。

・2種類の異なる金属を接合し、その結合部の一方を高温に、他方を低温に保つと起電力が生じます。この特性を利用して電力を生み出します。

 図1に、熱エネルギーからの変換プロセスを示します。

図1:熱エネルギーを動力や電力に変換するプロセス

図1:熱エネルギーを動力や電力に変換するプロセス

一般的に、エネルギー変換により動力を生み出す場合は、変換によるCO2排出量にも留意しなければなりません。特に、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を利用した場合は、多くのCO2を排出します。従って、地球環境保全の観点からも、エネルギーの変換効率向上が求められています。各種のエネルギー変換については、「図解エネルギー工学」(平田哲夫、他3名、森北出版、2018年)に詳しく説明されています。

2. 熱エネルギーを仕事(動力)に変換する方法

水力発電所では、図2(a)に示すように、高所にある位置エネルギーの高い水を流して、水車を回転させて発電します。その後、水は低い所に流出します。熱エネルギーを仕事(動力)に変換する場合は、図2(b)に示すように、高温熱源から受熱して、作動流体を用いて熱機関を回転させて発電し、その後、低温熱源に放熱します。水車が低い所に放水しないと回転しないのと同様に、熱機関では、低温熱源に放熱しないと作動しません。一般的に、高温熱源としては、ガソリン、軽油、天然ガスなど化石燃料の燃焼熱を用います。

図2:仕事(動力)を生み出す方法(引用:平田哲夫、他2名、例題でわかる工業熱力学(第2版)、森北出版、2019年、P.58)

図2:仕事(動力)を生み出す方法(引用:平田哲夫、他2名、例題でわかる工業熱力学(第2版)、森北出版、2019年、P.58)

図2(b)は、高温熱源から受熱した熱量QHのうち、仕事に変換できるのはWだけであり、残りの熱量QLは低温熱源に放熱することを示しています。すなわち、熱機関では、高温熱源の熱を全て仕事に変換することはできず、その一部は必ず低温熱源に捨てることになります。摩擦などの損失のない熱機関では、熱効率Eは受熱量に対する仕事の割合(E=W/QH)で表されます。

3. 内燃機関で熱を仕事に変換するしくみ

内燃機関は、自動車のエンジンなどのように、機関の内部で燃料を燃焼させて作動流体を加熱します。図3に、ピストンとシリンダからなる内燃機関を用いて、仕事を生み出すときの動作を示します。

図3:ピストンとシリンダからなる内燃機関の動作

図3:ピストンとシリンダからなる内燃機関の動作

シリンダ内のガス(作動流体)は、高温熱源から受熱すると加熱されて膨張するため、図3(a)のように、ピストンは押し出されます。このときに仕事(動力)を生み出します。その後、低温熱源に放熱すると、シリンダ内のガスは収縮するため、図3(b)のように、ピストンはシリンダ内へ移動します。すなわち、図3(a)はガスの膨張過程、図3(b)は圧縮過程を示しています。これを繰り返すことにより、連続的に仕事を生み出します。

シリンダ内のガスは、膨張や圧縮をすると、温度や圧力も変化します。これを、ガスの状態変化といいます。熱機関の状態変化は、5種類存在します。この基礎知識シリーズで扱うのは、圧力pを一定とする等圧変化、容積Vを一定とする等容変化、熱の授受なしに変化する断熱変化などです。

4. タービンで熱を仕事に変換するしくみ

タービンは、ガス、蒸気などの作動流体が持つ運動エネルギーを回転運動に変え、動力として利用できる機械です。図4に、タービンの構造を示します。

図4:タービンの構造(引用:平田哲夫、他2名、例題でわかる工業熱力学(第2版)、森北出版、2019年、P.167)

図4:タービンの構造(引用:平田哲夫、他2名、例題でわかる工業熱力学(第2版)、森北出版、2019年、P.167)

ガスタービンは、回転式の圧縮機を用いて連続的に空気を取り込み、燃料を燃焼させて高温高圧の燃焼ガスを作ります。そのガスでタービンを回転させて、仕事を生み出します。回転数を高くできるため、小型で高い出力を得られます。

蒸気タービンは火力発電所や原子力発電所で用いられています。燃料の燃焼熱や核分裂反応の熱エネルギーにより水を沸騰させて高温高圧の蒸気を作り、その蒸気でタービンを回転させて仕事を生み出します。

5. p-V線図と熱機関のサイクル

図3図4に示した熱機関のように、同じ動作を何度も繰り返すことを、サイクルといいます。図3で示した内燃機関の動作を、グラフ上にサイクルで表現してみましょう。

図5(a)に示すように、高温熱源より受熱して膨張する過程では、ピストンは右に移動します。このとき、初期状態1のガスは容積Vを増し、圧力pを低下して、状態2に変化します。この過程で生み出される仕事は、状態1→2の曲線の下側の面積WHになります。

一方、図5(b)に示すように、状態2のガスは、低温熱源に放熱しながら圧縮し、ピストンは左に移動します。このとき、容積Vを減少し、圧力pを増して、ガスは初期状態1に戻ります。この過程では、外部から仕事を与えて圧縮するため、状態2→1の曲線の下側の面積は外部から与えた仕事WLを表します。

図5(c)は、以上の過程をp-V線図にまとめて表示したものです。この内燃機関で生み出される正味の仕事Wは、膨張過程で生み出された仕事WHから、圧縮過程で外部から与えた仕事WLを引いたものになります。従って、正味仕事はW=WH-WLで求められ、図5(c)では、サイクルで囲まれた面積で表示されます。

図5:膨張過程と圧縮過程のサイクル

図5:膨張過程と圧縮過程のサイクル

図4で示したタービンでの状態変化は、状態1→2の膨張過程のみです。ただし、ガスタービンでは圧縮機を、蒸気タービンではポンプなどを用いて、状態2→1の圧縮過程を行います。

このようにサイクルで表現すると、その熱機関の特性や仕事の大きさなどを視覚的にも理解することができます。熱機関の特性や効率を考察するときは、p-V線図に表したサイクルを用いて、ガスの状態変化の過程を検討します。次回からはp-V線図を用いて、熱エネルギーから仕事を生み出すサイクルの特徴を説明します。

6. 熱電発電の原理

これまで述べてきた変換方法とは、全く異なる原理を1つ紹介します。異種の金属で閉回路を作り、その2つの接合部に温度差を与えると回路に起電力が発生します。これをゼーベック効果といいます。

図6(a)に、鉄線とコンスタンタン線(銅とニッケルの合金)の両端を接続した状態を示します。両端に温度差を与えると、接触電位差が変化します。これにより電流は、鉄線には高温側から低温側へ、逆に、コンスタンタン線には低温側から高温側へ流れます。これを熱起電力といいます。現在、熱電発電の材料としては、金属に代わって半導体も用いられています。図6(b)に示すように、p型半導体とn型半導体を接合した素子を直列に多数配列して、電圧を高めて使用します。

図6:異種金属間の電流の発生

図6:異種金属間の電流の発生

この原理を利用して、物体の温度を測定することもできます。低温側を一定温度とし、高温側を測定対象物に当てて起電力を測定します。起電力と温度差の相関式をあらかじめ作成しておき、相関式を用いて温度を求めます。これを熱電対といいます。

金属間の温度差により電流が発生することを反転させて用いることもできます。半導体の熱電素子に電流を流すと、接合部の一方は高温に、他方は低温になります。これにより発生した低温は冷却作用に利用できます。例えば、精密部品の冷却などに用いられます。

いかがでしたか? 今回は、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する熱機関の原理を紹介しました。次回は、ピストン式内燃機関とガスタービンのサイクルを取り上げます。お楽しみに!

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