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マイクロプラスチックの生成メカニズムと有害化学物質の吸着性能:マイクロプラスチック問題を考える2

マイクロプラスチック問題を考える

更新日:2019年3月20日(初回投稿)
著者:プリディクション郷事務所 兼 化学工学会SCE・Net 郷 茂夫
編集:株式会社イプロス Tech Note編集部

前回は、マイクロプラスチックの問題や海洋汚染の歴史を解説しました。今回は、マイクロプラスチックの生成メカニズム、有害化学物質の吸着性能について説明します。現在もいろいろな調査や研究がされており、見解の違いや不明点がかなり存在しています。

1. マイクロプラスチックの海洋サンプリング

第1回でも述べたように、マイクロプラスチックの大きさ、材料や形状についての定義にはまだ確定したものはありません。一般的には、5mm以下のプラスチック材料などの微小片や微粒子を指します。2018年、ISO(国際標準化機構)にマイクロプラスチック専門検討会ができました。マイクロプラスチック以外に、メゾ、ナノプラスチックなどの追加分類名称や、サンプリング法、分析・測定法などの世界標準化が検討されています。

マイクロプラスチックは、海洋でサンプリングしづらく、データ再現性が良くないという課題があります。サンプリングのやり方は、スクリーン目の大きさ0.35mm程度の網を使って海中をひいてすくい取ります。(出典:環境省、海洋ごみの実態把握調査、2016年)。マイクロプラスチック以外のゴミ、海藻、微生物などもすくい取られるので、人間が肉眼でピンセットを使い、より分けます。比較的大きなものは採取できますが、見えないものは見つけることができません。小さなマイクロプラスチックは、網をすり抜けてしまいます(図1を参照ください)。

図1:マイクロプラスチックのサンプリングの課題

図1:マイクロプラスチックのサンプリングの課題

2. マイクロプラスチックの生成メカニズム

マイクロプラスチックの生成過程では、1次マイクロプラスチックと2次マイクロプラスチックという分類用語がしばしば使われます。前者は陸上で人間が製造した製品で、それが廃棄されたものや、そのままの形で海洋に流出したものをいいます。後者は、始源廃棄物(マイクロプラスチックの元になる成型品の廃棄物や材料塊)が陸上または海洋で自然力により細分化、小片化されたものです。1次マイクロプラスチックがさらに小片化して、2次マイクロプラスチックになることもあります。

この分類と、陸・海洋・海底などの場所でマイクロプラスチックが移動、生成される様子を図2にまとめました。1次マイクロプラスチックとしては、工業用研磨剤、塗料、タイヤ添加剤粒子、診断用医薬品、化粧品類のスクラブビーズ、歯みがき粉、電気・電子部品、しゅう動部品、衛生用品、土壌保水材、アンチブロッキング剤、接着剤、自動車内装材、トナー添加剤、インクなどがあります。

図2:マイクロプラスチックの移動・生成変化

図2:マイクロプラスチックの移動・生成変化(1~6の番号については、第3回で解説しています)

・始源廃棄物からマイクロプラスチックが生成する要因

始源廃棄物からマイクロプラスチックが生成される要因は、複合的なものです。陸上と海洋で共通的な要因には、太陽光(特に紫外線)、熱、微生物の作用、水または湿気などの浸透などがあり、加えて、海洋と岸辺では、波の力、岸辺の砂や小石との打壊・摩擦などがあり、陸上では風雨、海底では泥や砂などの地質運動が挙げられます。

例えば、紫外線がプラスチック廃棄物に当たると、高分子鎖が切断されて分子量が小さくなり、分解劣化し微小化していきます。この現象は、日光の当たる場所に放置されたプラスチック材料なら、陸上でも海洋でも起こります。ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)では起こりやすく、塩化ビニルやポリエステルなどは起こりづらいです。従って、一定用途に使われるPEやPPには、添加剤として紫外線吸収剤(添加剤の1種)が使われています。これらがマイクロプラスチックになる際、添加剤が溶出するという別の問題があります。

岸辺においては、海に浮いているゴミは大きい形のうちは岸辺に打ち上げられ(ストークスドリフト)、紫外線、波や石砂との摩擦や打壊でボロボロに微細化されます。その後、小さくなったマイクロプラスチックは沖合に流れていきます(出典:保坂直紀、海のマイクロプラスチック汚染、東京大学海洋アライアンス、2015年)。

・海洋中の廃棄物とマイクロプラスチックの行く末

最終的に、マイクロプラスチックはどこに行き着くのでしょうか? 比重が海水より大きいもの(塩化ビニル樹脂、ゴム粉、無機物との複合材、一部の合成繊維など)は、海底に沈んで行きます。比重が海水より小さいもの(PE、PP、PSなど)でも、凝集して大きな塊になり、さらに海中で藻類、微生物や貝類などが付着し、比重が重くなって海底に沈んで行くと考えられています。すなわち、始源廃棄物やマイクロプラスチックの大部分は海底に沈んでいるのではないかと推定されているのです。

海洋に放流されたプラ廃棄物の97%は海底に沈んで蓄積されるているとの推定があります(出典:Chris Sherrington、Plastics in the Marine Environment、Eunomia、2016年)。また、ここ10年くらいの間、陸からの廃棄物の海洋流入は続いているのに、深さの浅い海洋中のマイクロプラスチックの量的増加はあまりないといわれます(出典:府川伊三郎、浮遊するPE・PPマイクロプラスチックの生成と行方、旭リサーチセンター(ARC)リポート、2018年7月、P.34)。さらに、1mm以下の小さいマイクロプラスチック存在割合は非常に少なく、むしろどこかへ消えてしまっているといわれます(出典1:磯辺篤彦、海洋プラスチックごみの動態、マイクロプラスチックシンポジウム、マテリアルライフ学会、2018年12月、出典2:磯辺篤彦、海表面を浮遊するマイクロプラスチックに係る調査、平成26年度沖合海域における漂流・海底ごみ実態調査委託業務報告書、2015年3月)。

マイクロプラスチックの多くが海底に沈積しているとすると、光は届かず、波の力もありません。海底の石や土砂の中に取り込まれるなど海底の地質運動や、深海の微生物による分解作用があるかもしれませんが、単なる化学変化だけでは数百年以上も分解されないといわれています。

3. マイクロプラスチックの吸着性能

マイクロプラスチック問題の核心は、有害化学物質(難分解性、生体蓄積性、毒性を有する物質の総称)のマイクロプラスチックへの吸着と濃縮です。それを海洋生物が誤飲・誤食することが問題となっているわけです。

マイクロプラスチックによる有害化学物質の吸着と濃縮についてはいくつか報告があります。インターナショナル・ペレットウォッチという活動で、世界中の海で採取されたレジンペレットビーズを分析して、有害化学物質の吸着量をデータ化しています。地域別のプラスチックペレットビーズへのPCBの吸着量のデータは4~2,900 (単位:nano-gram/gram-beads)とばらついており、人口の多い消費地の近海では吸着量(おそらく有害化学物質の濃度も高い)が多く、遠く離れた海洋では吸着量は低いといえます(出典:兼廣春之、プラスチックによる海洋汚染-マイクロプラスチック問題-、化学物質と環境No.137、2016年、P.8)。分析サンプルは、マイクロプラスチックの全体ではなく、各地で採取したペレットビーズだけという点に注意してください。

この吸着量をそのサンプルを採った海水中の有害化学物質濃度で割ると、ペレットビーズによる吸着の濃縮度が求められます。しかし、海水中の濃度が不明なのです。世界の海で、有害化学物質の濃度は一定ではなく、場所、時期によって大きく変動します。よって、吸着濃縮度は推測値となり、研究者により見解が分かれるところです。いずれにしても、濃縮度は1より高い(濃縮されているということです)とはいえそうです。

別の実験では、PE、PP、PVC、テフロンのマイクロプラスチックがPAH(多環式芳香族炭化水素)を吸着するのは事実であること、疎水結合性を示す有害化学物質ほど吸着量が多いこと、マイクロプラスチック樹脂の種類によって吸着量が異なることなどが報告されています(出典:鑢迫典久、マイクロプラスチックは何が問題なのか?、マイクロプラスチックシンポジウム、マテリアルライフ学会、2018年12月)。さらに最近の実験では、粒径の小さいものほど単位グラム当たりの吸着量が多いことも報告されています。ただ、有害化学物質の疎水性との関係は先の実験の結果と逆になっているようです(出典:田中周平、湖沼および海洋のマイクロプラスチックに吸着した微量有機化合物の種類と含有量、化学物質と環境No.153、2019年1月)。ミクロン単位の微粒子では、同じプラスチック材が核になっていても、さまざまな表面状態、凝集状態、不純物が付着した状態で、吸着能力を測定するのは大変困難です。今後も、定量的なデータを得ることが重要であると多くの研究者は考えています。

いかがでしたか? 今回はマイクロプラスチックの定義や、海洋汚染について説明しました。次回は、最終回です。生物への影響と、マイクロプラスチック問題への対策を見ていきます。お楽しみに!

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