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ノーベル賞技術で検査工程が変わる?:寸法・外観検査の技術トレンド1

寸法・外観検査の技術トレンド

更新日:2018年6月19日(初回投稿)
著者:株式会社光コム

生産現場には、必ず存在する検査工程。大型のワークになると、人の目に頼っているのが現状です。今、その検査工程も自動化されようとしています。どのような技術が使われているのか、さらに検査の自動化により起きる生産現場の変化を、全3回にわたり紹介します。

1. 検査工程が自動化の時代へ

自動車産業をはじめとする日本のモノづくりは、突き抜けた製造現場力に支えられています。ドイツでインダストリー4.0が提言され、世界的に注目が集まるよりも前に、日本の製造現場では自動化が進められていました。製造の現場力を究極に高めてきた日本だからこそ、人によるオペレーションの限界に早期に気づき、自動化に取り組んできたのです。

工場の現場は、「製造」「搬送」「検査」という工程の繰り返しです。「製造」と「搬送」は早期に自動化されましたが、「検査」だけは、今も多くの工場で人の目に頼っています。その傾向は製品が大きくなるほど顕著で、自動車産業は検査の自動化が進んでない典型的な例です。

なぜ、寸法・外観検査は自動化されていないのでしょうか? それは人の目はとても有能で、機械に置き換えられないからです。半導体などのサイズが非常に小さく、凹凸形状の少ない部品は、早くから外観検査の自動化が導入されてきました。車のエンジン部品など多くの鋳造部品では、そうはいきません。凹凸形状の激しい部品の外観を検査するには、高速、高精度、凹凸形状の測定が可能でなければなりません。さらに、製造現場にはあらゆる外乱光があります。このような外乱光に影響を受けない測定装置は存在せず、人の目に頼らざるを得ないのが現状でした。しかし、ようやく車のエンジン部品の検査も自動化されようとしています。

2. ポイントはノーベル賞技術!

検査を自動化するには、いくつもの壁があります。製造の現場では、多くの場合、部品検査のタクトタイムは1分程度です。外観のサイズを測定する方法は、針などをワークに接触させてなぞることで測定する接触検査法と、レーザーなどを利用して測定する非接触検査法の2つがあります。接触検査法は応用範囲が広い一方で、測定にとても時間がかかるため、全数検査に持ち込むことはできません。

もう一つは非接触検査で、半導体などの多くの精密小物部品にて採用されています。従来の非接触による検査は、カメラを使って画像処理で欠陥を検出する方式や、レーザーと三角法による検出法でした。この方法は、車のシリンダヘッドやバルブボディのようなサイズが大きく、凹凸が激しい自動車部品には適用できません。

そこで登場したのが、光コムと呼ばれるレーザー光のうなりを利用した非接触検査法です。1秒間に50万点もの測定データ取得が可能で、他の方式と比較して圧倒的に早く、大きなサイズの部品を高速で測定することも可能です。さらに、深さ方向へのダイナミックレンジも大きく、凹凸の激しい形状にも対応できます。その結果、図1に示すようにシリンダヘッドのような部品でも問題なく全数検査が可能です。

図1:シリンダヘッドと、従来と光コムによる検査の比較

図1:シリンダヘッドと、従来と光コムによる検査の比較

1分で、図2に示すような部品の3次元データを、全数取得可能です。

図2:シリンダヘッドの3次元データ

図2:シリンダヘッドの3次元データ

この光コムを用いた測定原理は、2005年に米国の物理学者ロイ・グラウバー氏らがノーベル物理学賞を受賞した光による計測の原理で、現在、世界で最も精度の高いものさしです。日本でも長さの基準を2009年に光コムと規定したほか、セシウム原子時計を超える精度であることも認定されています。この光コムによる計測技術が、産業に応用され、製造現場を変えはじめています。

3. 光コムの原理

光コムの原理を、詳しく見ていきましょう。光は、その周波数を計測機器として利用できれば、非常に高い精度が期待できます。一方で、光は周波数が高く、測定も容易でないため、ものさしとして使うには高いハードルがありました。光コムとは、非常に短い光パルス(100兆分の1秒)が数ナノ秒ごとに繰り返し発生する「くしの歯」のように見える光信号です。この「光のくし」は、周波数軸上に等間隔に並びます。レーザー光を、この光コムに重ね合わせることでできるレーザー周波数との「うなり」から、レーザーの周波数を計算することで、光の周波数を計測可能にし、高精度のものさしを実現しました。このようにして、光コムを初めて産業応用実現したのが光コム計測機器です。

図3:自然光・レーザー光・光コムの周波数比較

図3:自然光・レーザー光・光コムの周波数比較

4. 検査の自動化が品質保証も変える

検査の自動化は、検査工程の安定化だけでなく、品質保証や生産条件改善にも影響を与えます。例えば、シリンダブロックの3次元点群データを、部品全数分残すことができます。これにより、品質保証の考えが変わります。

製造現場では、良品として出荷しても、客先で不良と判定されるものがあります。その際に、元々不良だったが見逃したのか、良品だったが後の工程で傷が付くなどして不良になったのか、良品と判定したが判定基準が間違っており本来は不良品とすべきだったのかという判断に迫られます。現場では、こうした次工程以降の不良に多大な労働力を使って、解析を行うカイゼンを行っています。

検査データを全数3次元データにて残すことが可能な光コム検査装置があれば、後で発生した不良を完全にトレースし、容易に断定することが出来ます。判定基準が適切でなかった場合も、3次元形状データが残っているためにすぐに基準を修正し、良品として出荷されたのちに不良品となったものも、再度良品と証明できるなど、品質保証の考え方も変わってきます。

さらに、製造した部品全数の3次元測定データと製造条件を、1:1で対応させることもできます。これにより、製造条件と検査結果を客観的なデータに基づいて、紐付けることができ、定量的に傾向などを解析することが可能になります。また、日本国内だけでなく、グローバルでも問題となっている人材不足にも、検査の自動化はメリットがあります。製造現場の人材不足は、検査工程から始まることが多いためです。検査の自動化は、製造稼働率のゆらぎと固定費も減らしていきます。

今回は、光コムというノーベル賞技術、検査工程の自動化とそれに伴い起きる変化について、解説しました。自動車の燃費にかかわるシリンダヘッドでは、容積も全数計算できるようになります。これは、検査工程が、付加価値を生むことにもつがっていきます。次回は、自動検査工程導入により、どのように検査が付加価値を生むのか、詳しく述べていきます。

株式会社光コム ウェブページ(イプロス製造業)

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