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「バラ積みピッキング知能システム」を実現する「MUJINコントローラ」とは?:第7回ロボット大賞(経済産業大臣賞)を受賞

著者:サイエンスライター 森山 和道

ロボット大賞」という賞があるのを、ご存知でしょうか。ロボット技術の発展や活用を促すことを目的とした賞で、経済産業省、一般社団法人日本機械工業連合会のほか、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省などが共催で公募している顕彰制度です。

対象は幅広く、優れたロボットや部品、ソフトウェアだけでなく、活用事例や人材育成の取り組みなども対象となっています。

2016年の「第7回ロボット大賞」(経済産業大臣賞)は、ロボットベンチャーである株式会社MUJINの「完全ティーチレス/ばら積みピッキングMUJINコントローラ『PickWorker』(ピックワーカー)」が選ばれました。

MUJINコントローラは産業用ロボットの軌道をティーチレスで自動生成するためのコントローラです。EthernetかEtherCATで通信できる各社のロボットに対応しており、ばら積みピッキングなどの用途に使えます。

従来のロボットがそれだけの状態だとティーチングされた動作を繰り返す機能しかなかったのに対し、MUJINコントローラを使えば、事前のティーチングを行う必要がなくなります。ユーザーが行う作業は、1)干渉物とワークの3DCADデータの登録、2)ワークの把持位置の登録、3)搬送場所の登録の3ステップです。

評価されたポイントは、汎用性とタッチパネルを用いた直感的操作などの「ユーザー視点」とされています。

MUJINのティーチレスを実現するコントローラ

1. 株式会社MUJINとは?

MUJINコントローラを使ったランダムに積まれた箱のピッキング

賞の発表に先立つ2016年10月6日(木)、東京工業大学にて、ドイツ NRW.INVEST社、株式会社NRWジャパン、RWTH Aahen University(アーヘン工科大学)、東京工業大学が主催で『ロボティクス+ AI – 生産現場とサプライチェーン・マネジメントでの現状と可能性-日本とドイツ・NRW州の研究と応用』というシンポジウムが開催されて、そのなかで、MUJINのCEO兼共同創業者である滝野一征氏が「MUJINコントローラが起こすロボット革命 鬼門の物流多品種ピッキングとEU市場拡大に挑む」と題して講演しました。

ロボット大賞は10月19日(水)〜21日(金)に東京ビッグサイトで開催されるロボット展示会「Japan Robot Week 2016」のなかでも表彰式や合同展示、受賞者プレゼンテーションが行われますが、ここで一足先に講演レポートのかたちを借りて、MUJINコントローラについて、ご紹介しましょう。

株式会社MUIN CEO兼共同創業者 滝野一征氏

株式会社MUJIN CEO兼共同創業者 滝野一征氏

MUJINは、現在同社CTO(最高技術責任者)であるブルガリア出身の出杏光 魯仙(Rosen Diankov)氏が、2006年にロボット動作計画ライブラリ(OpenRAVE)を開発したことに始まります。2009年に滝野氏と Diankov氏はロボット展で偶然出会い、その後2011年に、MUJINを共同創業しました。

MUJINは、ロボットを作っている会社ではありません。作っているのはロボットコントローラです。

2. 物流現場での多品種ピッキングのニーズ

現在同社は、物流業界の無人化をビジネスの対象としています。物流業界は、すでにかなり自動化が進んでいます。ですが一番人手が必要な現場であるにもかかわらず、ケースの開梱(バラ化)と、ピッキングについてはまだ無人化されていません。

現在の物流システムの概要

現在の物流システムの概要

いまは通販業界を取り巻く環境が変化しています。かつては通販で購入するものは近くの店では手に入れにくいようなものでした。ですが多くの人が今では通販で日常製品を買うようになっています。物流業界のニーズは高まっています。通販業界が栄えるということは、「人が歩かないかわりに物流業が歩く」ということです。

ですが生産年齢人口の減少を背景に、需要は伸びているのに働く人は減っています。物流センターは遠いところにあるだけではなく、夜間の作業も必要であり、なかなか人気がないといいます。

このような現場にロボットを導入しようという話は以前からありました。にもかかわらず、なかなかロボットが入っていかなかった理由はいろいろありますが、一つは、同じことを繰り返す製造業と違って、物流分野で扱う対象は毎回違い、一度ティーチングすればすむというわけにはいかないからです。

一個一個すべての場合をティーチングするのは不可能ですし、そもそも製造業と違って、流れてくるものが物流現場にはコントロール不可能です。流れてくる対象を物流現場が決めるわけにはいかないからです。

そこで必要とされるのが、ティーチレスでリアルタイムにロボットの軌道を動作生成する技術です。滝野一征氏は「知能化とは自分で動けるということ」だと語りました。目の前にあるコップをとるとき、自分の腕がどう動作するかを考えて動かす人はいません。ですがロボットを動かす場合は、一つ一つの関節をどのくらいの速度でどの程度動かすのか、一つ一つ教えなければなりません。しかも対象が異なると動かし方は毎回まったく異なります。

MUJINコントローラを使うことで、3Dカメラなどのビジョンシステムを使って対象を見ることができれば、ロボットは自分で動作計画して動くことができます。滝野氏は「世界一の技術だ」と言います。

MUJIN ピックワーカー – 次世代バラ積みピッキング知能システム

この技術を使うことで、ロボットがこれまで活用できなかった領域にも適用できるようになりはじめています。前述のように、物流現場はだいぶ機械化が進んでいます。シャトル倉庫もありますし、既存の物流ロボットもあります。ピッキングする人の前にロボットで移動する棚がやってくるようになっています。

ですが棚からピッキングして箱に入れる部分は、まだロボット化されていません。そこがMUJINの狙い目であり、「自動倉庫とピッキングロボットは協業関係」だといいます。

自動倉庫とロボットでさらなる自動化が進む

自動倉庫とロボットでさらなる自動化が進む

ロボットメーカーもロボットが売れるし、現場もコスト削減が可能というわけです。ちなみに、倉庫一つに導入されると、ロボットはだいたい20-30台程度導入されるそうです。

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MUJINコントローラによるピッキング作業のティーチングレス化

3. 今後はEU市場へ

マテリアルハンドリングの市場はまだまだ広がっています。たとえば食品の物流も一例ですが、食品は非常に難しいと言われています。

同社ではまずは安定して大きな需要があるヨーロッパへの進出を考えているそうです。ヨーロッパ各国では、なるべく人を歩かせないことを考えた結果、自動化が日本よりもすすんでいるとのこと。自動化システムの多くがヨーロッパ製であることも、そのような理由によります。

現状の物流市場。ヨーロッパが2位

現状の物流市場。ヨーロッパが2位

なお、ロボット大賞は他にも、各省の大臣賞そのほかが出ています。公式サイトをご覧になってみてください。

参照:ロボット大賞公式サイト

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