インクジェット技術でプリンテッド・エレクトロニクスを実現
掲載開始日:2014-07-02 00:00:00.0
印刷技術で電子回路やデバイスを作るプリンテッド・エレクトロニクス。いまや微細な半導体製造プロセスさえも印刷技術で行えるほど急速に進化を遂げています。なかでもインクジェット(IJ)はとても緻密で正確な印刷が特長で、プリンテッド・エレクトロニクスで最も期待されている印刷技術です。
国内有数のIJ制御技術を持つワイ・ドライブ(大阪府門真市)の山﨑 智博社長にプリンテッド・エレクトロニクスとIJ技術について話を聞きました。(聞き手:イプロス編集部)
今回紹介する技術と製品
最先端インクジェット制御の技術資料
ノズルごとに駆動波形を個別制御するDPN制御技術と、ノズルごとのインクの吐出体積を測定できるインクジェット飛翔観測装置など、プリンテッド・エレクトロニクスを実現する最先端のインクジェット技術の資料です。
この記事で紹介した製品の関連資料がダウンロードできます。
国内屈指のIJ制御技術とプリンテッド・エレクトロニクスの技術開発メーカー
山﨑社長
――御社の概要を教えてください。
もともと私は大手電機メーカーでIJ技術を研究する技術者でした。2011年にその技術を活かしてスピンアウトし、IJ制御技術とプリンテッド・エレクトロニクスの技術開発メーカーとして創業しました。プリンテッド・エレクトロニクス向けのソフトウェアと制御基板のオーダーメイド、インクジェットインクの観測装置、塗布・印刷装置の開発を手がけています。
――プリンテッド・エレクトロニクスとはどんな技術ですか?
端的に言うと、電子回路やデバイスを印刷技術で製造する技術です。磁気テープの製造など昔から使われてきた技術ですが、いま「半導体製造プロセスを効率化する有望技術」として大きな期待が寄せられています。特に、いくつかある印刷技術のなかでも最も適しているとされているのがIJ技術です。
大気中で製造可能!これまでの半導体製造プロセスを大きく変えるインクジェット技術
インク吐出量の高精度化が課題
――具体的にIJ技術のどのあたりが適しているのですか?
これまで半導体の製造は、真空環境下での実施、露光やエッチングなど複数の工程、大量の化学薬品による環境負荷など、多くの制限と課題を抱えていました。それに対しIJ技術は、大気圧中でインクを飛ばして印刷し、必要以上の化学薬品を使わずに半導体の製造が可能です。半導体製造の低コスト化や製造工程の効率化、環境負荷の低減などに効果があると言われています。
またスクリーン印刷やグラビア印刷など他の印刷技術は厚めの成膜しかできず、膜を重ねるのを苦手としています。一方でIJ技術は薄膜、微細な部分への成膜に優れています。
半導体製造プロセスでIJ技術が実用化されているのはごく一部で、ほとんどが研究段階にあります。
印字ヘッドには1000以上のノズルが付いていて、一つひとつにごくわずかな寸法誤差があります。その誤差がインクを飛ばす量に影響し、結果として膜厚にバラつきが出てしまいます。そこをどう解決していくかが課題とされています。
インク1滴の体積を正確に測定&ノズル単位で正確・高精度に吐出量をコントロール
DPNの仕組み
――御社はその誤差の発生にどう対応しているのですか?
まずは、それぞれのノズルからどれだけの量のインクが出るのかを正確に測ることからスタートしました。そこで開発したのが、秒速10mで飛んでいくインク1滴の体積を正確に測れる「インクジェットインク飛翔観測装置」です。これまでにない100nsecの超短時間発光、超低残光、高輝度の光源を開発し、液滴体積±1%の計測を可能にしました。これによりノズルからの吐出量のバラつきを正確に数値化できるようになり、制御技術のベースを完成させました。
次に行ったのが、インクジェットインク飛翔観測装置で得たデータをもとにノズルごとに液滴量をコントロールできる技術「DPN(Drive Per Nozzle / Drop volume correct Per Nozzle 」の開発です。
ピエゾ方式のIJは、ピエゾ素子に電圧を加えて素子の変形を利用してインクを吐出します。通常のIJではヘッド単位で電圧の制御を行いますが、当社はそれをノズル単位、ピエゾ素子ごとに制御することでノズルごとの吐出量の微妙な違いを解決しました。
これによって、それまで5%もあったインク1滴の体積のバラつきが1%以内に調整できるようになり、均一な成膜を実現できるようになりました。
インクジェットインク飛翔観測装置は、近畿経済産業局の「関西ものづくり新撰2014年」に選ばれました。DPNも半導体をはじめ、メディカルやバイオなど微小で精密さが求められる分野で注目されていて、いくつかの装置メーカーとの商談も進んでいます。
これからもIJとプリンテッド・エレクトロニクスの最先端を走る
インクジェット制御基板オーダーメイドも可能
――今後どのような事業展開を考えていますか?
ナノレベルの膜を安定して作り、それを何層も重ねていくようなことはIJ技術が最も適しています。プリンテッド・エレクトロニクスで回路を作ろうと思ったら、IJ技術しかありません。
IJ技術による半導体や有機エレクトロニクスの回路基板の製造は、まだ研究開発の段階です。当社は測定装置から制御ソフトウェア、制御基板、さらには塗布・印刷装置も持っています。IJ技術とプリンテッド・エレクトロニクスの最先端を走る企業として、実用化に向けてリードしていきたいと思っています。
また、IJは、主に印字ヘッドと走査機構から成るシンプルな構造で、ハードウェアはすぐに作ることができます。しかし制御ソフトウェアは非常に複雑で難しく、自前で作れるのはプリンタメーカーくらいです。
当社ではIJ制御基板をオーダーメイドで作り、プリンタメーカーへもODMで特殊用途の基板を提供しています。IJ技術を自社で活用したいという企業をサポートし、IJ技術の可能性を広げていきたいと思っています。
この記事で紹介した製品の関連資料がダウンロードできます。
取扱会社
プリンテッドエレクトロニクス工法向け技術、電子機器の開発 インクジェット技術コンサルティング ■技術 プリンテッドエレクトロニクス。インク飛翔観察装置 カーボン系導電ペースト。285nmUVLED光源 デジタルサーボ制御 ARM系CPUでベクトル制御を実現 ■製品 インクジェット液滴・高精度飛翔観察装置 アナログ系混在電子回路 高速/高精度・各種駆動回路 インクジェット印刷機 CMYK4色/GEN5使用 プリンテッドエレクトロニクス用インクジェット塗布装置 ■インクジェットヘッド駆動基板 リコー社 GEN5ヘッド 京セラ社 KJ4A/B コニカミノルタ社 KM256LNB-DPN KM128SNG-MB など FujiFilm Dimatix SG1024、PQシリーズ など ■ARM系CPUによるデジタルサーボ制御基板 電流ベクトル制御プログラム(d-q座標変換)を3相PWMで実現 ARM系 CORTEX-M3シリーズ 各社のCPU対応